9月の声を聞くと、アオリイカが恋しくなる。港には、生まれたばかりの新子という小さなイカがプカプカと漂っている。とても愛嬌のある姿だ。これを釣るのは忍びないのだが・・・アオリイカの釣りは、エキサイティングで、とても面白い。水温がまだ高いので、釣りにはひと月ほど早いのだが、行ってみることにした。生きたアジを30匹買い、由良湾の柏の漁港へ。
波止場の中央で、年老いた母親と息子が釣りをしていた。めぼしい釣果はないという。その横で竿を出させてもらう。
釣り始めて1時間ほど経った時、リールから「ジー、ジー」という音をたてながら糸が出ていく。アオリイカがアジに食いついたのだ。胸が締め付けられるような緊張感。この瞬間がたまらない。
しばらく待って、ヤエンという仕掛けを道糸に装着して海中に下ろす。これをイカまで届かせ、イカを引っ掛けるという寸法。そろり、そろりと引き寄せ、1杯目をゲットした。この時期にしてはまずまずの型で400グラム以上はありそうだ。
さらに1時間後、再びイカが乗った。これもうまく取り込むことが出来、2杯目。同じような大きさだった。好調な滑り出しだったが、その後はさっぱり。
手持無沙汰なので、ぼーっと海を眺めていた。その時、岩が動いたような錯覚にとらわれた。潜水艦が湾内に入って来てきて、湾の中央に停泊したのだ。釣り場から300メートルほどしか離れていない。
湾奥に海上自衛隊の由良基地があるのだ。甲板で20人ほどの乗組員が何やら作業をしている。その周りを2、3隻の船が取り巻いている。物々しい風景だ。
それから2時間ほどたったころ、リュック姿の青年2人が姿を現した。1人がカメラで潜水艦の方向を2、3枚撮影したあと、短い竿をリュックから取り出し、ルアー釣りを始めた。しかし5分もたたないうちに姿を消した。
妙な釣り人だなあと思った。2人とも角刈りで、目つきは鋭い。潜水艦の写真を撮るのも怪しい。
ひまじんは若いころ、スパイ小説が好きだった。ジョン・ル・カレ、グレアム・グリーン、フレデリック・フォーサイス、フリー・マントル・・・など手当たり次第に読んだ。その経験からすると、どのような型の潜水艦がどこにいたか−−というのは軍事の有益な情報である。とすると、あの2人組は某国のスパイか?
20数年前、鳥取へ出張し、帰りの日にレンタカーで海沿いをドライブした。ある漁港で釣りをしている老人と小一時間、話し込んだ。老人はタコ釣りをしていたが、あたりをキョロキョロしてどうも気が入っていないように見える。
帰り際、老人はボソリと言った。「釣りの格好をして、怪しい人がいないか監視しているんだ。車のナンバーも控えるしね。アルバイトなんだよ」。公安調査庁か県警警備部か知らないが、その筋から頼まれているのだろう。島国の日本にとって、沿岸部は諜報の最前線なのだ。スパイ好きのひまじんの推理も満更ではないかもしれない。
さて、イカ2杯を釣った後、何の反応もなかったのは、潜水艦の停泊と関係あるのではないか。潜航中でなくても、敵を探索する音波を発して警戒しているかもしれない。アオリイカはこの音波が嫌いで、逃げ出したのだ。そうに決まっている!



まずこの写真をみて下さい。湯浅湾に近い田村漁港の波止で私が釣り上げた魚たちです。バラエティーに富んでいるでしょう。 丸ハゲ、グレ、サンバソウ、べラ、そして型のいいアジ。私がひとりで釣ったのですよ。私が・・・ 
これは主人が釣ったグレ19匹とチヌ1匹です。これもすごい!

午後、主人が田村漁港にグレ釣りに行くと言い出しました。田村漁港はひまじん夫婦が暮らす生石高原から車で40分ぐらいの所にあります。
来週、主人のゴルフ仲間が山小屋にやって来るので、グレの一夜干しを作っておこうというのです。夕方には戻ると言うので、私もついていくことにしました。田村漁港は私が初めて波止でサビキ釣りをしたところ。アジがよく釣れるのです。午後2時すぎ、田村漁港に到着しました。
文章は、ここからひまじんにバトンタッチ。女房は先日の由良湾でキス釣りに挑んだが、余り振るわず、挫折している。そこで、浮き釣りの仕掛けを作ってやる。 餌はオキアミ、浮き下は1・5ヒロ。最初は合わせのタイミングが分からず、浮きが沈んでもアレ、レ、レ?と言いながらまごまごしている。合わせも優しすぎる。ピシッという手首を返すような合わせが分かるまで30分ほどかかった。それでも段々慣れてきて、サンバソウや丸ハゲを釣り上げた。しばらくして、「引いてる、引いてる」と大喜びしながら20センチほどのグレをゲット。「キス釣りよりこっちの方が断然面白いわ」と、挫折から立ち直ったようだ。
「あっ!アジが見えた」と叫んでいる。アジ釣りはもうベテランで、海中のアジの姿を見分けられるようになっているのだ。
直ちに、のべ竿を引っ張り出し、サビキ仕掛けを作っている。素早い対応である。この時期のアジは10センチ前後の豆アジ。しかし、いきなり20センチ余りもある刺身サイズを釣り上げた。これくらいの大きさになると、5・4メートルの竿は満月のようにしなる。豆アジを想定して小さなハリを使ったため、バラシも何回かあった。
それでもぼちぼち釣れ続く。ひまじんの方は、ヌカ切り釣法で手のひらサイズのグレを19匹と25センチほどのチヌ1匹を釣り、早めに切り上げて女房のお手並みをながめていた。
もう、あたりは暗くなり始めている。「もう帰ろう」と催促するが、やめるとは言わない。「あと1回だけ」が30分以上も続き、なんとしつこいことか。女が狂うと怖い。恋だけじゃありません・・・
結局、竿をしまったのが6時半。女房にとって今日の釣りはご満悦だったようで、帰りの車中はいつもより口数が多かった。「また、行くで〜」

少し涼しくなってきたので、久しぶりに海へ行こう。女房はキス釣りに挑む。キャスティングの練習までして臨んだ1回目は見事に空振りに終わった。今回が2回目だ。ひまじんはグレを狙う。キスとグレがともに狙えるとなると、釣り場は限られてくる。餌屋のスタッフに聞くと、困った顔をして言葉に詰まっていた。とりあえず、中紀の由良湾沿いを走る。アオリイカ釣りでよく来る柏の波止場には誰もいない。ここには砂浜があり、キスが釣れるかもしれない。
もう秋の空が広がっていた

様子を見るため、波止から沖向きに投げるようアドバイスする。女房のキャスティングは結構うまくなり、沖合5,60メートルに20号のオモリが落ちる。
3投目、仕掛けを引き上げると何か付いている。キスだ!老眼鏡をかけないと正体が分からないほど小さい。体長3・5センチ。キスのようでもあり、トラギスのようでもある。キスの第1号にしては、せつな過ぎる。
キスに見えるが、小さ過ぎて・・・

その後はハゲ2匹、チャリコ少々が釣れただけで、キスは来てくれない。「場所替わる」と言って、女房は背後にある砂浜に移った。ここではフグの猛攻を受け、仕掛けがなくなり帰ってきた。
「私、キス釣りに向いていないわ」と深刻な顔をしている。まあ、どんな釣りでも、すぐに満足な結果は出ない。釣りとは忍耐、また忍耐。何回に1回くらいしか、神様が微笑んでくれないものなのだ。
やり慣れているアジのサビキ釣りに宗旨替え。港の奥の船だまりがポイントだ。クーラーボックスを運んでやる。仕掛けを下ろすと、10センチくらいのアジが姿を現した。ぼちぼち釣れて女房に笑顔が戻ったが、思わぬ闖入者が忍び寄る・・・
ネコである。この港には3匹の猫が常駐していて、釣り人が捨てる外道の魚を食べて生活しているのだ。とにかく人懐っこく、「ニャーン」と鼻声を上げながら足元にまとわりついて来る。
しかし、動きはまことに敏捷なのだ。女房がアジを釣り上げると、サッと寄ってきて、針から外れてこぼれたアジをかすめ取る。女房は悔しがるどころか、ネコとの駆け引きを楽しんでいるようだ。そのうち、すっかり仲良くなり、竿をほっぽり出してネコと遊び始めた。女房は小さい頃からネコ好きなのだ。



ひまじんは、ヌカ切り釣法でグレを狙っているが今一だ。潮が澄み過ぎているためだろうか。それでも午前中に手の平くらいのグレ3匹と、30センチを超える良型のアイゴ1匹を釣った。アイゴの一夜干しは絶品なのだ。これに加えて60センチを超えるボラ1匹も持ち帰ることにした。味塩でしめて一晩冷蔵庫で寝かせると、これまたおいしい。
アイゴとグレの一夜干し

日差しが強くなってきたので、昼前に釣りをやめた。アジ、グレ、アイゴ、ハゲ、チャリコ、ボラなど十分なおかずが釣れた。女房に納得のキスは釣れなかったが、また次がある。
帰り道、真っ白の奇岩が連なる白崎海洋公園に立ち寄り、昼食をとった。ここは、日本の渚百選、夕日百選に選ばれており、白い岩と青い海のコントラストが美しい海岸だ。

ひまじんが釣ってきたアユを「おいしい、おいしい」と食べてくれる女房。しかし、1匹を釣る苦労は分かっていないと思う。アユ釣りを始めて30年余りになるが、女房に竿を持たせたことは一度もなかった。これではアユ釣りの難しさを理解するのは無理な話で、これは迂闊だった。午後の遅い出発となった。女房を指導するので、ひまじんの鼻息は荒い。河原に車を横付けでき、釣りやすい場所を選んだ。仕掛けをセットしてやり、さあ、スタート。と思いきや、女房は「オトリ屋さんでトイレ借りてくる」とすたこら姿を消した。やる気があるのか!
仕方なく一人で釣りを始めたが、釣れない。女房は帰ってきて、日傘をさしてどっかり腰を下ろして見物を決め込んでいる。1時間ほどしてやっと1匹を取り込んだが、女房は見ていない。天然のオトリに替わったので、2匹目がすぐ掛った。対岸に向かって走るわ、走るわ。女房に竿を持たせてその強い引きを体験させてやろう。「オーイ、はよ来い!」と叫んで振り返ったとたん、バレてしまった。
その後、女房に少しだけ竿を持たせ、オトリアユの泳がせ方を教えた。糸を張らず、緩めずがキーポイントで、この感じはつかめたようだ。釣れはしなかったが、今日のところはこれでよかろう。
そこへ、川でよく出会うウナギ釣りの名人がやって来た。ひまじんは、前々からウナギ釣りをしたかった。何といっても、川で捕れるウナギは格段においしいのだ。1キロ1万5000円の値が付くという。
名人は81歳。ここ有田川のほとりで生まれ、3歳の時からウナギ釣りをしていたと言う。その後、大阪で働き、退職金で近くに別荘を建て、ご夫婦で釣り三昧の生活を送っておられる。
この前会った時、「弟子入りさせてほしい」と頼んでおいた。
ひまじん 「弟子入りの件、どうですか。教えてくれますか」
名人 「うーん、見たところ根性のある顔つきやないなあ」
ひまじん 「恐れ入りました。はい、根性はおまへん」
名人 「何日も釣れんことがある。まあ、3日でケツ割るわな」
ひまじん 「まあ、そう言わずに・・・」
と言うような会話があり、仕掛けや釣り方をざっと教えてもらう。竿を作ったりしていると、来シーズンの挑戦になりそうだが、ぜひ名人に弟子入りしたいと思っている。そして・・・
名人 「家に中型のウナギを生かしているけど、持って帰るか?」
ひまじん 「いえ、そんな高価なものを」
名人 「そうか」
なぜ、「遠慮なくいただきます」と言わなかったのか。女房は後ろから背中をつついたが、物欲しげな態度は出せなかった。家に帰っても、後悔ばかりしていた。寝付きも悪かった。
ウナギの寝床を探すため水中メガネで岩の近くを潜る名人


有田川のアユはどうしているだろう。雨が降らないので川は渇水状態。アユの好物の石に付くコケは腐り気味のはずだ。ひもじい思いをしているのだろうか。アユのご機嫌うかがいに、2週間ぶりにアユ釣りに行った。オトリ屋で最近釣れているポイントを教えてもらい、その場所に入った。
しかし、これは明らかに判断ミス。釣れるから毎日釣り人が竿を出す。だからポイントが荒れ、アユも神経質になる。賢いポイント選びは、前日、釣り人が入っていない場所を探すのがいいのだ。
案の定、瀬やトロ場が連続する200メートルくらいの区間を行ったり来たりしたが、まったく釣れない。年をとるとこらえ性も根気もなくなり、すぐ投げ出してしまう。夕方再挑戦するため、オトリ缶を川に浸け、山小屋に引き返した。
午前中の釣果

昼ご飯を食べ、昼寝をし、再び川へ。午後2時ごろ、場所替えして竿を出した。
オトリを入れてわずか10秒、水中でギラッと魚体が光り、ビューンと水中糸が上流に吹っ飛ぶ。掛かりアユがオトリを引っ張りながら、ものすごいスピードで上流に走る。竿を寝かせて寄せにかかるが、なかなか寄ってこない。竿は満月のようにしなっており、0.2号の糸は限界に近い。
アユとの根競べだ。無理をすれば糸が切れてオトリもろとも水中に消えてしまう。焦って竿を立てると深場に潜られるので、竿を寝かせたままじわり、じわり浅場に誘導する。バシャーンと2匹のアユがもつれて水面を撥ねる。思い切って引き抜くと、うまくタモに納まった。22センチの良型だった。
釣りたての大き過ぎるアユをオトリに使い、急流に沈ませると、またすぐ掛った。今度は対岸に向かって疾走し、これまた寄ってこない。竿が伸びきっている。躊躇すれば糸が切れるので、強引に寄せて引き抜いた。2匹のアユは水面すれすれでナイスキャッチ。これも22センチはありそうだ。
興味のない人には退屈な実況中継はこれくらいにしておこう。結局、糸切れで2匹損失、キャッチをしそこなって1匹の損失だったが、釣果は23〜20センチが計8匹だった。
この時期になると、アユは一段とパワーアップしている。掛っても、タモに納まるまでが一苦労だ。アユ釣りは、どの釣りよりも面白いし、食べても最高〜〜。













