「私を見つけてくれて有難う」・・・アニメ・この世界の片隅に

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  アニメ映画「この世界の片隅に」を観に行った。アニメを劇場で観るのは初めてだ。正直言って、アニメは漫画本の延長みたいに思っていたので、余り関心がなかった。しかしそれはとんでもない認識不足だった。アニメにしか出せない味わいがあり、すごく面白かった。

 この作品は、「キネマ旬報」で日本映画作品賞に選ばれ、片渕須直監督はアニメ作品では史上初となる映画監督賞も受賞した。これは後から知ったことで、私は主役「すず」の声を演じた「のん」(能年玲奈)さんの大ファンであり、彼女を応援する気持ちで劇場に足を運んだのだ。

 彼女が主演したNHKの連続テレビ小説「あまちゃん」は、毎朝欠かさず観ていた。後日の再放送をすべて録画し、そのDVDは私のちょっとした宝物である。女房がいない時、こっそり観たりしている。何が原因か知らないが、「のん」さんは芸能界から冷遇されている。稀にみる豊かな才能を摘んでしまう芸能界に義憤を感じているのだ。

 片渕須直監督は、何かのインタビューで「主人公すずの声を演じるのは、のんさん以外に考えられなかった」と語っていた。私ものんさんの才能に改めて驚嘆した。スクリーンに映し出される絵も素晴らしかったが、この映画に魂を吹き込んだのは、間違いなくのんさんだった。

 映画は、広島市内で屈託なく暮らす浦野すずの幼少期から始まる。絵を描くのが得意で、友だちに瀬戸内海の白波をウサギのように描いて見せた。やがて軍港に近い呉に嫁いだ。夫は鎮守府の書記官で、思いやりのある優しい人だったが、小姑のお小言に耐えなければならなかった。

 やがて呉も戦争に巻き込まれて行く。戦況の悪化で配給が乏しくなり、野辺で野草を摘んだり、4匹のめざしを分け合ったりしながら、不器用ながらもささやかな暮らしを懸命に守っていく。しかし昭和20年6月の空襲で時限爆弾が爆発し、一緒にいた姪の少女が死亡し、自らも右手を失った。

 8月6日には広島に原爆が投下され、15日に天皇陛下の玉音放送によって終戦となった。ラジオ放送を聞いたすずは外に飛び出して号泣した。翌年、夫ともに広島を訪ねたすずは、廃墟の中で夫に「この世界の片隅で自分を見つけてくれて有難う」と語りかけた。そして、この世界の片隅で出会った戦災孤児の少女を連れて呉に帰った。

 この映画は、戦争に翻弄される家族を描いているが、グリグリと反戦を押し付けるような映画ではない。主人公のすずは、どこかぼんやりとした性格で、少女をそのまま大きくしたような人物だ。すずは、戦争を鼓舞するような当時の風潮に疑問を持つこともなく、ちっちゃな体でその苦難の時代を受け入れていた。

 のんさんのほんわかとした独特の語りによって、すずを血の通う生身の人間として生き返らせた。これはもう見事である。もちろん絵も素晴らしかった。中でも、冒頭の絵のように、食事の足しにと野草を摘むシーンは健気さが溢れていて印象的だった。市井のどこにでもいる普通の人間を、けれんみなく描いた良い作品だった。
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