森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

山ウド讃歌・・・野性の風味に魅せられて

 春めいてきて、各地から桜の便りが聞かれるようになった。例年開花が遅い大津でも蕾が桃色になり、今にも咲きだしそうだ。わが家の庭からは沈丁花の甘い香りが漂い、いよいよ春だなぁと実感させてくれる。春は本当にうれしい。

 春と言えば、山菜である。4月初旬、山菜の宝庫ともいわれる紀伊山地の生石高原に移り、山小屋暮らしを再開させるが、今からもう山菜のことが気になって仕方がない。そして、あの独特の風味が蘇ってくる。

 今、一冊の本を手にしている。昨年夏に読んだ「猟師の肉は腐らない」という曰くありげなタイトルの本である。著者は小泉武夫・東京農大名誉教授で、農学博士だ。珍味、ゲテモノに詳しく、「食の冒険家」を自称する。

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 この本は、小説なのかノンフィクションなのか分からない所が実に面白い。東北の山で暮らす仙人のような独り者と、大学の先生のほほえましい交友を描きながら、山の暮らしや食べ物について綴られている。それらは極めて実践的で、猟師の肉はなぜ腐らないかの秘密は読んでからのお楽しみ・・・。

 この本は、先生の渋谷の自宅に郵便小包の段ボール箱が届いたところから始まる。差出人は、福島県の山で暮らす仙人の男である。箱を急いで開けてみると、根元に泥が付いた見事な天然独活(うど)が、ゴロゴロと何本も入っていた。小さなメモ用紙には「やまうど今うめがら送るがらたべてくなしょ」と、それだけ書かれていた。

 私は、もうこの下りを読んだだけ気持が高ぶった。私の山暮らしは7年になるが、山菜採りで1年が始まるのだ。ワラビ、ゼンマイ、山ブキ、コシアブラ、タラの芽などを採るが、山ウドこそ山菜の女王と思っている。下手な文章でウドを讃えるより、本文から引用しよう。

 先生はその夜、早速ウドを食べた。水で泥を落としている時からもう、野性のウドの強烈な香りが漂った。街で売られているウドよりは丈は短いけれど、硬く、太く、もっこりしている。根元のあたりは、栽培ものでは到底かなわない妖しいほどの赤紫色を帯びている。天然美色とは正にこのことを言うのだろう。

 そして、人智の全てを結集しても、とてもこのような色は再現しえず、人間の努力を嘲笑うかのような高尚さがある。快い野性の匂いを嗅ぎながら、またウドを無性に貪りたくなった。泥を落とし水気を拭き取ってから、端に味噌を付けて食べた。鼻腔から薬草を思わせる匂いが抜けていった。

 洗練された野生の甘みとほのかな苦みがチュルチュルと湧き出てくるのであった。そこに塩熟れした味噌の濃厚なうま味がかぶさり、大脳味覚受容器はたちまちのうちに喜びで充満してしまう。葉は小さく刻んで味噌汁の具にしたが、郷愁をそそる匂いが混じり合い、野趣満点の妙味を堪能した。

 著者のこのような表現は、まるで孫を溺愛するかのようである。野性への愛おしさも感じる。私も同感であり、何か付け足すものがないか頭をめぐらしてみたが、もうこれで十分だ。

 4月中旬になると、山ウドは私が暮らす生石高原で採れるようになる。草原の斜面に這いつくばって、小指の先ほどもない若芽を探す。そこを掘れば真っ白な茎が姿を現す。タオルで泥を落とし、採れたてにかぶりつく。独特の味と風味が体を貫き、至福の時である。私にとってこれが真の春である・・・。

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         ↑ 昨年4月撮影
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   17:11 | Comment:4 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
 イレグイ号 [URL] #-
いや~、楽しみですね~。
いつも奥さんに見つけていただいてばかりですが、今年もなにとぞ、よろしくお願いいたします。

小泉武夫の本は僕も何冊か読んだことがあります。
自らを「味覚人飛行物体」って呼んでいるんですよね。

著作に、日本で一番美味しい醤油は和歌山県御坊市の「堀河屋野村の三ツ星醤油だ。」と書いてあったのをずっと覚えていて、いったいどこで買えるのやらと思っていたら、インターネットがどんどん普及してきてそのおかげで醸造元を見つけることができました。
このときに初めてインターネットの恐るべき威力におののきました。
もう20年近く前のことです。
 2015.03.24 (火) 18:58 [Edit]
  [URL] #-
      イレグイ号さんへ

 春の足音が聞こえてきましたね。
年を取ると、本当にうれしくなります。
 山ウドの写真、美味しそうでしょう?
今年も、たくさん採りましょう。
 堀河屋野村の三ツ星醤油・・・知りませんでしたね。
よく御坊に行くので、買ってみたいです。
 醤油は少し甘めが好きです。
これは郷里の醤油の影響です。
今は、人吉市から取り寄せています。
市販の醤油は辛くてダメです。
 2015.03.25 (水) 18:07 [Edit]
 ボーダ [URL] #QoAa5NeQ
山ウド、おいしそう!! 海外に住んでいても、日本のものがかなり手に入りますが、山菜だけは手に入りません。去年、年ぶりに日本に帰った時は山菜の季節で、いろいろ食べました。ほーーんとに羨ましいです。山菜が毎年食べられて。年を取るごとに山菜が食べたい気持ちが強くなってきていて、このままだと老後は山菜を食べたいが故に日本で暮らしたいかも、と思うほどです。お醤油もいろいろあるんですねー 私なんか、スーパーで見つけたものを買っていますが、奥が深いんですねー
 2015.03.27 (金) 07:32 [Edit]
  [URL] #-
     ボーダ さんへ

 コメント、有難うございます。
以前、帰国された時のブログを読ませていただきました。
ボーダさんは山形(?)でしたよね。
山菜の本場ですから、召しあがった山菜はブランド品です。さぞ美味しかったでしょう。
 私の山小屋は、醤油の元祖の湯浅の近くです。
でも地元を裏切って、少し甘い醤油を九州から取り寄せています。
海外では多様な醤油を手に入れることが出来ず、仕方ありませんね。
 
 2015.03.29 (日) 18:35 [Edit]






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