森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

光明皇后と出会う・・・法華寺十一面観音

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 新聞の文化面に小さな記事を見つけた。奈良の法華寺で、秘仏の十一面観音が公開されるという。またとない機会なので、女房とともに奈良へ向かった。

 何年か前、井上靖の小説「星と祭」を読み、十一面観音に興味を持つようになった。小説の舞台は北近江で、ここには戦国時代の戦火をくぐり抜けた十一面観音がキラ星のごとく点在し、その多くが集落の人々の篤い信仰によって守られてきた。小説では、琵琶湖で遭難した娘の父親が、娘の姿と重ねるように十一面観音を巡拝する姿が描かれている。

 北近江の数奇な運命を辿ったこれらの観音菩薩を訪ねる私の小さな旅は、2013年の年末から始まった。これまでに小説に登場する十一面観音の多くを巡り、今は国宝に指定されている7体の十一面観音を巡拝している。残すは、大阪・道明寺と今回訪ねた法華寺だけとなっていた。

 法華寺は静かな住宅街の中にあった。平城宮跡のすぐ東側で、歩いてもたいしたことのない距離だ。このあたりは平城京の昔、権勢を誇っていた藤原不比等の広大な邸宅があった場所らしい。

 不比等の娘の光明子が土地を相続し、ここに法華寺を開基したとされる。光明子は聖武天皇の妃で、皇族以外の人が皇后になる先例となった。法華寺は各地に建てられた国分尼寺の総本部である。ちなみに総国分寺は大仏さんの東大寺だ。

 小さな山門をくぐって境内に入った。拝観料は1000円。いくら秘仏といっても少々高い。左手に十一面観音を本尊とする本堂があり、その甍(いらか)は唐代の様式なのだろう。優美な姿である。

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 靴を脱いで本堂に入ると、中は意外と狭く、50畳くらいかもしれない。秘仏公開とあって10人前後が座り、神妙な顔つきで拝観していた。秘仏は想像していたより小さく、高さは1m。史料によると、カヤの一木造りで、色彩が施されない。それがこの観音さんの魅力の一つだろう。ただ厨子の中は薄暗く、前に身を乗り出してもよく見えないため、少し物足りなかった。

 ひとつ皮肉を言わせてもらえば、同じ国宝で最高傑作とされる北近江・向源寺の十一面観音像は、至近距離から360度ぐるっと回って拝観できる。このため一番後ろにある「暴悪大笑面」も拝見できる珍しい展示形態だ。観音さんの慎み深い表情には感動するが、それとは真逆の邪悪な大笑面は一見の価値がある。なお、拝観料は300円である。

 不信心者の皮肉はさて置いて、私はご本尊を拝見してガンダーラの石像に似ていると思った。私のような素人の直感など当てにならないが、実は、それは当たらずとも遠からずだった。パキスタン北部のガンダーラ地方から派遣された「問答師」という仏師によって、平安時代初期に彫られたのだという。どこかガンダーラの気配を感じても不思議ではなかった

 観音さんのモデルは、光明子と伝えられている。昔、この時代の本をよく読んだことがあり、その多くは、光明子について貧困や病気の弱者に手を差し伸べる慈悲深い人として描かれていた。反面、父の不比等は持統天皇に近づき、藤原一族の隆盛を築いた有能な人物だが、権謀術数の人物として強調する本も少なくなかった。気の毒ではあるが、歴史には必ず明暗が宿る。

 法華寺で十一面観音像の写真を三枚買った。厨子の中が暗かったので、今はその写真をまじまじと見つめ、目に焼き付けている。光明子ゆかりの像というだけで、限りなくイメージが広がる・・・。
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管理人のみ閲覧できます 2016.11.02 (水) 22:11 [Edit]
  [URL] #-
    コメントを下さった「山」さんへ

 訪問して下さり、有難うございました。
きつつき工房のご夫婦とは知り合いです。
良ければ紹介させていただきます。
 私は木工をするほど器用ではありません。
ただ、作っているところを見ているだけです。
 海釣りもしておられるのですね。
これは私も一緒です。
 もし、お越しなら事前に予定を知らせて下さい。
その時に待ち合わせ場所を決めましょう。
分かりやすいのは、生石高原山の家の駐車場ですが・・・。
 2016.11.03 (木) 09:06 [Edit]
 山崎年史 [URL] #-
宜しくお願い致します。
 2016.11.03 (木) 10:42 [Edit]
 イレグイ号 [URL] #-
僕もこの辺りをほんの少し歩いたことがあります。
平城遷都1300年祭のとき、近くに担当している店舗があったのでちょっとだけ仕事をサボって歩きました。
目的は法華寺のそばにある海龍王寺でした。
遣唐使の安全祈願をした寺と聞いたので海上安全でもお願いしようかと思い、訪ねましたが拝観料がけっこう高かったので入り口で引き返しました。(仕事中という後ろめたさもあったのですが・・・。)

駅に向かう途中に法華寺があり、大層立派なお寺で、あとからそうとう由緒あるお寺だと知りました。
ここも結構な拝観料で、奈良のお寺を訪ねるにはけっこうなお金がいるものだと思ったものです。
 2016.11.03 (木) 18:45 [Edit]
  [URL] #-
    イレグイ号さんへ

 「文化」というのは高くつきますね。
奈良でも京都でも、お寺を2か寺拝観し、昼ごはんを食べれば夫婦で5000円以上かかります。
その国の文化度は、文化財の拝観料を見れば分かると思いますが・・・どうでしょう。
行ったことはありませんが、ルーブル美術館では子供が美術品の写生をしているそうですね。
日本じゃ考えられませんね。
 2016.11.04 (金) 18:54 [Edit]






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