森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

年は取っても純愛はいい・・・三島由紀夫の潮騒

 私の部屋の壁紙を張り替えるため、別室に運び出していた書籍を本棚に戻す作業をしている。思い出のある本を手にすると、ページをめくったり、読み返したりして、作業は遅々として進まない。

 そんな時、ふと手にした本が「三島由紀夫全集」だった。昭和46年12月の発行だから、30歳前後に買った本だろう。「潮騒」「金閣寺」「憂国」など代表作10編が収められている。多分、そのうちの3、4編くらいしか読んでいないと思う。

 そもそも純文学というのは、肩が凝ってどうも苦手である。しかし「潮騒」は、すらすら読めたような記憶がある。齢を重ね、あの甘酸っぱい青春の純愛小説がやけに懐かしく、その場に座り込んで読みふけった。

 小説の舞台は、伊勢湾に浮かぶ歌島(実際は神島)という小さな島である。漁業を手伝う18歳の青年は、父親の都合で養女先から島に帰された少女と出会う。やがてお互いは惹かれ合い、恋仲となった。いじらしいほどの純愛物語である。

 改めて読み返すと、三島由紀夫の美学の何たるかが少し分かった。青年が外航船に乗った時、台風の海を泳いで船をロープで固定し、危機を救ったことがある。それは強靭な肉体がもたらした結果であり、彼の心はかつてない誇りに満たされた。

 強く美しい肉体にこそ三島の美学があり、自らもボディービルで肉体を鍛え上げていた。実は学生時代、同じような男がいた。彼は、部室が並ぶ中庭でひとり黙々と木刀を振っていた。寒い日でも、上半身裸のことがあった。

 彼は熱烈な三島ファンだった。いや、ファンなどという軽いものではなく、教祖のような存在だったらしい。当時は学生運動全盛の時代で、皇国を崇めていた彼は、あの時代の異端だった。ふらふら生きていた私に対し、彼はいつも「理屈などどうでもいい。体こそ鍛えよ」と手厳しく批判していた。

 あれから何十年も経った。久しぶりに三島文学に接し、あの男はどうしているだろうと懐かしく思った。大学卒業と同時にぷっつりと消息を絶ったが、きっとどこかで師の教えに従い、国を憂いているに違いない。

 先日、全国紙の1面トップで「三島由紀夫の肉声テープ」の発見が報じられていたが、彼はこの記事を読んだだろうか。三島はテープの対談で「平和と言えばその内容は問わない。これこそが偽善だ。その偽善の根本は平和憲法にある」と語っている。あの男はさぞや得心していることだろう。

 ところで間もなくトランプ氏が米大統領に就任するが、三島由紀夫の名言を付記し、祝意を表しておこう。「現代では崇高なものが無力で、滑稽なものにだけ野蛮な力がある」。滑稽も野蛮も、トランプ氏の辞書にはないかもしれないが・・・。
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   15:15 | Comment:2 | Trackback:0 | Top
 
 
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 イレグイ号 [URL] #-
僕は三島由紀夫の生死感、「「死が肉体の外から中に入ってきた気がするんです」という言葉に戸惑いを感じました。覚悟できるほど強烈に入ってくる「死」とはいったいどんなものだったのでしょうか。

「潮騒」だけは読んだことがありますが、あんな純愛を書く人の最後とはまったくつなげることができません・・・。
 2017.01.20 (金) 19:21 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
    イレグイ号さんへ

 「死が肉体の外から中に入ってきた」
難しい表現ですが、分かるような気もします。
あの割腹死を予言したような言葉とも受け取れます。
名作「金閣」でも、美しい女性が海軍兵士(?)と恋に落ち、結局、兵士の銃弾で死亡します。撃たれることを受容するような場面として記憶しています。
結局、彼の死生観に「殉じる」というものが重きを成しているように思いますが・・・。


 
 2017.01.22 (日) 10:06 [Edit]






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