FC2ブログ

等伯の松林図に会えた・・・

IMG_0053.jpg

 長谷川等伯の生涯を描いた作家安部龍太郎の小説「等伯」を手にした時、表紙を飾る水墨画「松林図屏風」に大きな衝撃を受けた。あれ以来この絵が目に焼きつき、いつか実物を見てみたいと思い続けていた。

 絵画についてまったく素養のない私だが、どこにでもあるような松林に吸い込まれたのはなぜだろう。絵から押し寄せてくる静寂感、松林の向こうに広がる果てしない空間・・・。しかし何より、「切なさ」とか「はかなさ」という無常観が迫ってきて、私の心は震えた。

 この絵を見たいと思い、「松林図」がどこに所蔵されているか調べてみた。等伯の故郷・能登半島の七尾美術館ではなく、東京国立博物館に収められていることが分かった。わざわざ和歌山から東京の上野公園まで出向くほど裕福ではないので、見るのを半ば諦めていた。

 ところが、京都国立博物館で開催されている「国宝・特別展」に展示されていることを知った。会期は10月3日から11月26日までで、210件もの国宝が順次展示され、「松林図」は期間中ずっと展示されるとのことだった。会期末が迫ってきたので、女房とともに京都へ車を走らせた。

 午前9時半の開場に間に合うよう、京都駅から臨時バスで博物館に向かった。臨時バスが出るくらいだから、物凄い人出である。それもそのはず、桁外れと言ってもいいスケールの大きい国宝展なのだ。教科書に出てくるような国宝ばかりで、漢委奴国王印(金印)は余りにも有名だし、源氏物語絵巻、信貴山縁起絵巻、雪舟の山水図、源頼朝像、油滴天目茶碗など目白押しである。

 国宝「松林図屏風」は、近世水墨画の最高傑作にふさわしく、2階展示室の最も目立つ場所に展示されていた。6曲1双の屏風の前に立った時、余りにもあっけなく私の前に現れ、今そこにあるのが信じられなかった。私を探していた女房に腕を引かれ、やっと屏風の前を離れた。

1280px-Hasegawa_Tohaku_-_Pine_Trees_(Shōrin-zu_byōbu)_-_right_hand_screen[1]

 この松の林は、等伯の郷里七尾の風景だろう。50歳代の円熟期の作品と言わる。等伯30歳代の初め、郷里に妻子を残し、京都で絵の修行を積むため能登を出奔した。妻子は後に呼び寄せるが、もはや後戻りできない等伯の決意と、故郷に決別する切ない気持ちが込められているように思う。

 故郷の風景を記憶しておきたいと思うのは、誰しも同じだろう。石川啄木は「ふるさとの山に向かひて言ふことなし ふるさとの山はありがたきかな」と、故郷の岩木山を詠んだ。凡庸な私だって、故郷の湖を見ると、帰省して遠くへ帰る日、母親が見せたすがるような視線を思い出す。そんな万感の思い込めて、屏風を見た・・・。

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

カレンダー

09 | 2018/10 | 11
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

月別アーカイブ

ブログ内検索

全記事表示リンク

訪問者数

ランキング参加中!

PR

PR

PR