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値切った薬缶

 所用があって大津に5日ほど滞在した後、和歌山の生石高原の山小屋に戻った。留守が長いと、家のログ材は冷え切ってしまい、薪ストーブで大量の薪を燃やしても、なかなか暖まらない。ログの家の難点は、一旦冷えると暖かくなるまで時間がかかることだ。

 2時間ほど燃やし続けると、やっと暖まってきた。ストーブの上に載せた薬缶が、コトコトと心地よい音を立てている。薬缶は昔から日本人の暮らしに寄り添ってきたし、山で生活する私たち夫婦の仲間のような存在でもある。

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 薬缶は、京都・鴨川に近い丸太町通りの古道具屋で手に入れた。この店には時々立ち寄り、ランプや木製品などを買ったことがあるが、20数年前のある春の日、夫婦で古道具店を訪ね、掘り出し物がないか物色していた。

 店の奥に進むと、銅製の薬缶が無造作に置かれていた。一枚の銅版を打ち出して作られたもので、表面に付いた打ち出しの痕が銅の趣を醸していた。丸みを帯び、どっしりとした存在感を放っており、無性に欲しくなった。

 女性の店主に値段を聞くと、確か3万円近かったと記憶している。注ぎ口の根元に少し傷のようなものが見受けられ、「この部分は大丈夫か?」と聞くと、店主は薬缶に水を張って戻ってきた。

 すると、根元のあたりから水が滲んでおり、「なーんや、漏れてるじゃない」とケチを付けてみた。店主が「じゃ、半額でいい」と言い、それでも高いと思ったが、このおおらかなフォルムの魅力にとりつかれ、買ってしまった。

 家に帰って修理できるかどうか確かめるため、水を入れてみた。ところが一滴の水も漏れないのだ。あの時、なぜ水が滴っていたのだろうか。水漏れを指摘したことに忸怩たる思いもあったが、店は決して損はしていないはずだ。骨董とはそんなものだと思う。

 薬缶がいつごろ作られたものか分からないが、100年以上は経っていると、勝手に思っている。蓋のつまみに彫られた桔梗の家紋からすると、武士の家系を持つ旧家の蔵から出てきたものかもしれない。

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 桔梗紋と言えば、信長を討った明智光秀の家紋だ。裏切りの家紋として忌み嫌われ、家紋を替えた武家もいらしい。坂本竜馬の家も桔梗紋である。司馬遼太郎の小説「竜馬が行く」の中で、坂本家は近江・坂本城の城主だった光秀の家来だったようなことが書かれていたように思う。

 あれ以来、桔梗紋の薬缶は薪ストーブの上に鎮座し続けている。薬缶は余りに重くて湯を注ぐのに少々難儀するのだが、焼酎のお湯割りを作ったり、コーヒーをいれたりしている。その重量感がまた、たまらない・・・。
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コメント

なんだか、落語の、「はてなの茶碗」みたいなお話ですね。
年を経た雰囲気が薪ストーブとピッタリ合っているような気がします。

ふもとでも寒い日が続いています。
今日も北風が強くて家で停滞しながら次回の釣りのために仕掛けを作っていまます。
これはこれで楽しいものですが・・・・。

    イレグイ号さんへ

 コメント有難うございます。
今日も氷点下です。
年をとるごとに寒さが耐えがたくなります。
明日にでも山を下りようと思います。
 春まで2回ほど様子を見に来ますが、
定住は4月からです。
また山菜採りに来て下さい。
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