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雪の竹野海岸でカニを食べる

 日本海の竹野海岸へカニを食べに行った。この1泊旅行は、娘が招待してくれた。焼きガニ、しゃぶしゃぶ、カニ味噌・・・。グルメ番組のタレントのように、「甘ーい」なんて月並みで安っぽいコメントはしない。本場のタグ付きのカニだから、美味しいに決まっている。

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 海岸に近い民宿を予約したが、そこに決めた最大の理由は、ペットと一緒に宿泊できることだ。この寒い時期に、愛犬ぴーちゃんを自宅で独りにしておくのは忍びない。ぴーちゃんはもう中年なので車の中でしゃぐようなことはなく、上目使いでわれらの会話に耳を傾けていた。

 まずは香住に向けて車を走らせた。「応挙の寺」で知られる大乗寺で、円山応挙や弟子たちによる襖絵を見るのが目的だ。入場料は800円で、寺の女性が案内しながら解説してくれた。まずは「孔雀の間」に通された。ほぼ原寸大と言われる大きな孔雀が描かれ、背景に金箔が貼られた豪華な襖絵だ。

 さすが応挙の作品だと思ったが、解説の女性は「デジタル再生画でございます」と付け加えた。最先端の技術を駆使した絢爛な襖絵だが、それはただのレプリカ、印刷物なのだ。「芭蕉の間」「山水の間」もデジタル再生画らしく、名画を後世に残すため本物を収蔵庫で保存しているそうだが、理由はどうであれ裏切られた思いだ。

 私のような素人でも、本物の絵を鑑賞する時、作者がそこにいるかのような息遣いを感じたいと思うものだ。絵の一本の線にしても、迷いのない技量を見逃すまいと見つめる。カニの例えで恐縮だが、ズワイガニは水揚げされた地名のタグが本物を証明してくれる。デジタル再生画なんて冗談じゃない。

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 次は、列車転落事故が起きた余部鉄橋に向かった。1986年12月28日午後1時半ごろ、鉄橋を通過しようとした7両編成の回送列車が強風に煽られ、40m下の水産加工場の上に転落した。工場で働いていた主婦5人と列車の乗務員1人の計6人が死亡した。日本海を望む風光明媚な余部は、一瞬にして惨劇の地となった。

 私が働いていたメディア関係の本社には、午後の遅くに事故の一報がもたらされた。前夜は泊まり勤務だった私は、この事故の取材でまたも泊まることになった。最初は「そんなアホな」と半信半疑だったが、事故の詳細が明らかになるにつれ、風速30mの風の威力に戦慄した。

 鉄橋には、駅に通じるエレベーターが設置されていた。高所恐怖症の私には、恐ろしい高さである。雪が積もるプラットホームからは白波を立てる日本海が一望できた。それは墨絵のようだった。ここには道路もトンネルも通すことが出来ない地形であり、鉄橋は苦肉の策だったのだろう。かつて「裏日本」という負をイメージした言い方をしたが、余部はまさにそんな土地だった。

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 2日目は朝から吹雪になった。城崎温泉の近くにある国の天然記念物「玄武洞」を見学した。噴出した火山のマグマが固まり、石垣のような形状になったものだ。ここは玄武岩を切り出した跡地だが、この地方の家庭では、ころあいの石を持ち帰り、漬物石として使っているらしい。

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 昼近くになり、出石の皿蕎麦を食べることにした。娘がスマホで調べた人気店に入ったが、正直言ってわれら夫婦が打つ蕎麦の方が格段に美味しいと思った。蕎麦には「角が立つ」という言葉がある。包丁で蕎麦を切ったとき、切り口が鋭いという意味で、茹でたてでないとこうはならない。この店の蕎麦は、茹でて時間が経っていたのかもしれない。

 豊岡市出身の国民栄誉賞と言えば、登山家であり冒険家の植村直己である。実家の近くの里山に彼の名前を冠した「冒険館」があり、入館した。5大陸最高峰を踏破した登山用具や、北極圏で使用した犬ぞりなど多数の遺品が展示してあり、見ごたえがあった。

 彼が遺した言葉の数々も掲示してあり、その中に「冒険とは生きて還ること」とあった。しかし1984年、マッキンリー冬期単独登頂に成功したものの、下山途中に行方を絶った。「生きて還る」ことは叶わなかったのだ・・・。

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コメント

No title

ぴーちゃんはなんだかちょっと迷惑そうな顔をしていますね。気のせいでしょうか。
カニもご相伴にあずかれたのでしょうか?

「青春を山にかけて」は何度か読み返した思い出があります。
大冒険を淡々と語っているところが逆にすごいと思いました。

No title

    イレグイ号さんへ

 ぴーちゃんは車が好きで、ご機嫌さんでしたが、何しろ海からの風が強烈で、驚いていました。
 植村直己の冒険館は良かったです。とくに、北極やアラスカで使った道具類がたくさん展示されていました。もう一度、彼の著書を読みたくなりました。
 本からにじみ出る人懐っこさこそ、彼の最大の魅力ですね。
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