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蝶ケ岳から下山し、福地温泉へ

 去年の今頃、高校時代の友人3人とともに、わが国有数のカールが見られる北アルプスの涸沢に登った。事前の打合せで、登山だけでは芸がないので、下山したら温泉に入ろうということになった。

 そこで、ホテルを2軒も経営している同級生Nに「どこか知っている温泉宿があるか?」と聞いてみた。すると、「家内がいつも泊まる福地温泉の長座という旅館なら知っている」と言った。「家内がいつも泊まる」というセリフがグサリ胸に刺さった。

 泊まったことはないが、福地温泉なら私もよく知っている。上高地・北アルプスの玄関口、平湯温泉から新穂高温泉に向かって車で15分ほどの所にある。何度か寄り道し、温泉街を見に行ったことがある。奥飛騨の名にふさわしい落ち着いた温泉街だった。

 「長座」という宿も聞いたことがあり、家内が一度は泊まってみたいと言っていた。しかし私たちは、登山が目的なのでそんな贅沢な宿には泊まらず、安い宿ばかりを泊まり歩いていた。素泊まりの宿を利用することも少なくなかった。

 先日、北アルプスの蝶ケ岳に登ったが、下山したら福地温泉の「長座」に泊まることにした。たまには贅沢するのもいいだろう。それに、Nが言った「家内の定宿」という言葉が耳にこびり付いていたから、対抗心みたいなものがなかったと言えばウソになる。

 蝶ケ岳から下山したその日、福地温泉に向かった。車は家内が運転していたが、長座はすぐ分かった。敷地の入り口には、宿の案内人の若い男性が立っていた。案内人は私たちに不審な目を向け、頭を下げることはなかった。軽トラで乗り入れた宿泊者など珍しいのだろう。しかも、外れかけている車のバンパーにガムテープがペタペラ貼ってある。

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 家内は、駐車場の一番手前の目立つ場所に車を止めた。しかも、隣の車は赤いベンツで、余りにも落差が大き過ぎる。案内人が近寄ってきて、慇懃に「いらっしゃいませ」と言った。「珍しい客やろ?」とからかってみたが、「いえ、そんなことはございません」と生真面目に答えた。

 仲居さんが眺めの良い部屋に通してくれた。何はともあれ温泉に入りたい。旅館から100mほど離れた別棟の温泉に行った。すぐ近くを川が流れ、激流が岩を噛む音がした。この風呂では石鹸の使用が出来ず、ここが源泉なのだろうか。湯につかり、蝶ケ岳からの絶景を思い浮かべた。疲れた足がじんじんした。

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 本館にある大浴場と露天風呂に再び入った後は、食事である。囲炉裏のある個室に通された。料理はいっぱい出てきた。飛騨牛や岩魚は囲炉裏で焼いて食べた。家内は料理の一品、一品を吟味して食べていたが、私は料理が地酒に合えばいいのだ。奥飛騨の水で育まれた辛口を舌の上で転がした。

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 長座のような宿は心が落ち着く。古民家の燻された木材がふんだんに使われているし、あちこちに囲炉裏もある。雪深い奥飛騨ならではの雰囲気、つまり、「火」とともにある暮らしがここにある。わが家も囲炉裏を備え、薪ストーブで暖をとる「火」のある暮らしをしており、親近感を覚える。

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 翌朝、風呂から上がって大きな囲炉裏のある部屋をのぞいてみた。若い女性が新聞紙をくべたり、火吹き竹を使ったりし、薪を燃やすのに四苦八苦していた。この女性は、長座のホームページの写真に魅入られ、5日前に職を求めて千葉からやって来たばかりだという。

 なかなか燃えないので、ここは私の出番。ちょっとしたアドバイスをすると、燃え出した。女性はホッとしたのか、ぺこりと頭を下げた。幼げな笑顔がチャーミングだった。

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 長座での一夜は、老境に入ったわが人生の曲がり角になったかもしれない。これからは登山の行程を短くし、少々お金がかかっても、ちょっと贅沢な温泉を楽しみたい。思いもよらない心境の変化である。年齢相応という自然な流れだろう・・・。
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コメント

No title

長座、高いですね!一番いいお部屋だと二人で6万円以上するではないですか!
前回の記事も読みましたが、お二人ともお元気で凄いです。槍・穂高、絶景でとても美しいですが、残念ながら私は行けそうにありません。(夫は大丈夫そうですが)
1000m以下の山でもヒーヒー言いそうです。
近所の山(とは言えないか、丘)でも行きはよいよい、登ると次は戻ってこないといけない訳で、いい加減の所で止めておかないと帰りの体力が残りません。

「老境に入った人生の曲がり角」分かります。
私は体調を崩してからそう思っています。
したい事があっても行きたい所があっても体が付いて来ないのは歯痒いです。
その分他の楽しみを見つけて人生を楽しく、と思います。(7月からピアノを習っています♪いつまで続くやら)

とは言え、少しずつ体力回復を目指したいと思ってはいます。
定年後の半自給自足が憧れですから。
うちも買うなら軽トラですね!

No title

   May さんへ

 コメント有難うございます。
元気だなんて恥ずかしです。
もう、バテバテで情けなくなりました。
これからは山の中腹まで歩き、景色を楽しみたいと思っています。
 「山高きが故に貴からず」という言葉があります。見かけだけで判断するなという金言ですが、山も同じだと思います。私も近所の低い山を楽しもうと思います。
 どうか、一歩一歩、体調を回復して下さい。
 あ、そうそう。田舎暮らしは軽トラが便利ですよ。小回りがききます。ガソリンを食わないし、税金も安いです。
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