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大津絵は面白い

 大津の自宅から国道1号線を京都に向かって15分ほど歩くと、峠の右手に逢坂の関跡を示す石碑と常夜灯がある。古来、畿内に通じる不破の関(美濃)、鈴鹿の関(伊勢)、この逢坂の関を「三関」と呼んでいた。百人一首には、清少納言の「夜をこめて 鳥のそらねは はかるとも よに逢坂の 関はゆるさじ」の一首がある。

 さらに、峠を越えてもう少し歩けば、追分の地である。追分とは道が二つに分かれる場所で、各地にその名が残るが、ここは京都と伊勢の方面に道が分かれていたらしい。江戸時代、逢坂から追分あたりにかけては商人や巡礼の旅人、宿の客引きたちでごった返していたといい、街道の両側には土産物を売る店が軒を連ねていた。

 その中に、大津絵を売る店が何軒もあった。ここが大津絵発祥の地らしい。大津絵の職人は、即興のようにさらさらと描き、今の貨幣価値からすると1枚数百円ほどの安さで売っていた。当初は仏画として描かれていたが、その後、人生訓や風刺をユーモラスに描く民衆の絵画として発展した。家の中に貼ってお守りにしたともいう。

 古くは芭蕉が歌に詠み、ピカソや岡本太郎も画風を参考にしたという大津絵が海を渡り、パリで来年4月から6月にかけて、「大津絵-江戸時代の庶民絵画-」と題する企画展が開かれることになった。海外ではこれまで小規模な展示が行われたことがあったが、110点もの本格的な展覧会が行われるのは初めてだそうだ。

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 これを記念した「大津絵・民芸・ヨーロッパ」というシンポジウムが大津市内で開かれ、参加した。参加費は無料で、400の予約席はすべて埋まり、大盛況だった。どちらかというと地味な絵画だが、根強い人気があり、私も大津絵の店に時々立ち寄るなど関心があり、大津絵教室に通うことも考えたことがある。

 大津絵の魅力は、おおらかさにあると思う。浮世絵のような繊細さはなく、どちらかと言うと大雑把である。使われる色の種類も朱、黄、緑、白など7種類と少なく、素人でも描けそうな素朴な味わいがある。絵師は無名で、安く、早く、量産したのが特徴だ。画題は100種類くらいあったらしいが、淘汰されて仏画、風刺画、武者絵、美人画、鳥獣画が残った。

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 代表的な絵は「鬼の寒念仏」だ。角を生やした冷酷な鬼が念仏を唱える場面を描いたものだが、情け深そうなことを言ったり、表面だけ慈悲深いように装ったりすることを風刺した絵である。

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 「猫と鼠」も面白い。猫は鼠を餌とするが、鼠に酌をさせて酒盛りに興ずる遊び好きの猫を描いている。逆に言えば、食われることも知らず酌をする呑気な鼠ということになる。猫に酌をさせ、食われることも知らず、酒に溺れる鼠の絵もある。

 鼠に追われて逃げる鬼など、噴き出してしまうような絵が多い。それにしても、100種類以上もあったとされる大津絵に、宿場町大津や琵琶湖、あるいは近江八景を描いたものが見当たらないのは不思議だ。おおらかな画風と同様、変に地域性にこだわらないところが旅人に受けたのだろうか。

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