FC2ブログ

ゴーンさん、検察は甘くない

 ゲスの勘繰りだろうか・・・。フランスの司法当局は、東京五輪の誘致を巡り、日本オリンピック委員会の竹田恒和会長に贈賄の疑いがあるとして、訴追する手続きを開始したと発表した。日本では、仏ルノー会長カルロス・ゴーン被告の身柄を拘束し、捜査を続けており、仏当局がその報復に乗り出したと感じさせる絶妙のタイミングなのだ。

       *       *       *
 
 さて先日、東京地検特捜部は、日産の元会長ゴーン被告を特別背任などの罪で追起訴した。有価証券報告書の虚偽記載の罪で二度の起訴を経て、ついに事件の本丸である特別背任での起訴に漕ぎつけた。

 特別背任は、自分もしくは第三者の利益を図り、会社に損害を与えた時に成立する。懲役10年以下、もしくは1000万円以下の罰金に処せられる。起訴内容は、ゴーンが日産を食い物にしたとする趣旨で、その悪質性から裁判で有罪となれば執行猶予のない実刑になる可能性が高いと思う。

 ゴーンをめぐる報道は、実にひどいものだ。海外メディアは、ゴーンによる不正の事実よりも拘留の長さだけに焦点を当て、批判している。被告は推定無罪の身だから人権が守られるべきだとしても、国によって司法制度は異なり、正当な手続きで捜査が行われていれば何も違法ではない。

 どの国にも、積み上げられてきた法の歴史があり、法の執行もその国の事情がある。例えばフランス。パリ警視庁などの警察小説にもよく出てくるけれど、勾留は原則24時間だが、証拠を判断する予審の段階なのに最長4年もの勾留が認められている。どうも欧米メディアは、他国の人権意識を見下し、説教したがるのだ。

 そのフランスの高級紙と持てはやされるルモンド紙だが、ゴーン事件について「破滅的な原子力事故を起こした東京電力の指導者が獄中で暮らすことはなかった」と皮肉り、ゴーンの長期拘束を批判した。何の関係もない原発事故を引き合いに出すのは、高級紙の割には品位がなく、的外れである。

 この事件に対する東京地検の捜査は、「巨悪を眠らせない」の名セリフで名を馳せた「特捜部」の存亡をかけた戦いでもある。10年ほど前、大阪地検特捜部が厚労省局長・村木厚子さんを誤認逮捕するという大失態を犯し、特捜部廃止の声さえ上がった。今も検察のトラウマであり、ゴーン捜査は相当の決意と覚悟で臨んでいるはずだ。

 私は新聞記者の駆け出しの頃と、その数年後の二度にわたって検察の担当記者をしていた。現役時代は検察庁舎に入りびたりになり、検事の部屋のドアを叩くのが日課だった。今はどうか分からないが、その当時、検事が被疑者を取り調べている以外の時は、少しくらいなら話に応じてくれる検事もかなりいた。

 地検のある検事のことは、今でも忘れられない。その人は東京高検検事長にまでに上り詰めた優秀な人で、私はその検事の部屋をしつこいほど訪ねたものだ。私がいつものように「何かありませんか」とあいさつすると、検事は「あんた、御用聞きか」とひどく叱られ、「何か具体的な事柄をぶつけるのが新聞記者だろう?」と説教された。

 彼からはそれほどの特ダネは得られなかったが、新聞社の先輩からよりも多くのことを教えられた。ある日、未公表の事件について話をぶつけると、彼はボソッとある弁護士の名前を教えてくれた。そこから取材が始まり、新人記者にとって身が震えるほどの特ダネを書くことができた。

 ゴーン事件を巡る週刊誌やテレビ、海外メディアの報道は、しばしば「検察のリーク」が意図的なものだと決めつけている。失礼ながら、民放の取材力は新聞の足元にも及ばない。確かにリークはあるかもしれないが、いきなり検事の所に行ってリークにありつけるほど甘い世界ではない。

 検事には公務員法による守秘義務があり、情報の漏洩があれば処罰されるのは言うまでもない。だから検事から話を引き出すのは容易ではなく、夜討ち朝駆けや日ごろからの信頼関係が必要だ。しかも多くの場合、一から十まで教えてくれず、ちょっとしたヒントから取材を重ね、全容を解き明かしていくのだ。

 ゴーン側は豊富な資金力で有能な弁護士を雇い、裁判に臨もうとしている。特別背任の構成要件である日産に損害を与えたかどうかについては色々言う人がおり、裁判での有罪を危ぶむ声もあるが、私はゴーンの有罪は揺るがないと確信している。日本の検察の威信がかかる捜査であり、司法取引による隠し玉もあるはずだ。まだまだ追い詰めなければならない・・・。
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

カレンダー

12 | 2019/01 | 02
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -

月別アーカイブ

ブログ内検索

全記事表示リンク

訪問者数

ランキング参加中!

PR

PR

PR