森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

【夫の日記】 みちのく夫婦旅

  朝から雨が降っている。紀伊山地の山小屋から滋賀の自宅に帰って10日になる。今日、和歌山に戻る予定だったが、用事が済むまであとしばらくかかりそうだ。鬱々とした日々が続く。
 軒下のベンチに座ってタバコを吸う。小さな庭にブルーベリーの木が2本あって、雨なのに蜂が3匹、4匹飛んでいる。実の甘みを吸っているのだろうか。
 やがてヤマガラが2羽、エゴの木にやって来た。青い実が釣鐘のようにたくさん付いている。ヤマガラはこの実をくちばしでくわえてぶら下がり、体重の重みでちぎるのだ。なかなか巧みな技である。
 今日のような手持ち無沙汰の雨の日は、無性に旅に出たくなる。これまでの旅を思い出したりもする。3年前に敢行した17日間の東北旅行が一番印象に残っている。
 関西に住んでいると、東北は縁遠い。それだけに、憧れでもあった。見るもの、食べるもの、人との触れ合い、秘湯・・・何もかも期待を裏切らない素晴らしい「みちのく夫婦旅」だった。

 滋賀から車で出発したのは、5月中旬だった。女房と運転を交代しながら一路福島県へ。喜多方ラーメンを食べて、夜は会津若松でわっぱ料理を楽しんだ。フキノトウがおいしかった。
 残雪の白布峠を越えて白布温泉へ。宿は3軒あり、「西屋」に泊まった。ここの温泉は圧巻だった。熱いお湯が3メートルほどの高さから、薄暗い湯舟に滝のように落ちて来るのだ。その量たるや半端でない。これが東北の温泉か--。

IMG_0133_convert_20080929145642.jpg

 蔵王のお釜は、まさに神の思し召しだった。深い霧がわずかの時間だけ消え、青い水を湛えたお釜が見えたのだ。

IMG_0145_convert_20080929145951.jpg

 山形の山寺を見て、次の日は銀山温泉。カタクリの花が咲いていた。中尊寺で藤原3代の栄華や芭蕉の足跡にも触れた。
 あれこれ見物して乳頭温泉の黒湯へ。秘湯の名にふさわしい趣があった。お酒を飲んでお湯につかっていると、若いバスガイドさんが湯舟に入ってきてびっくりするやら、うれしいやら。旅情を満喫させてくれた。タオルを外に置いていたので、前を隠すものがなくて出るに出れず、湯につかり続けて脂汗が噴出した。

IMG_0170_convert_20080929150306.jpg

 角館で食べた稲庭うどんはおいしかった。がん治療で有名になった玉川温泉にも行った。ゴザを敷いて岩盤の上に横たわる人々。胸に迫る光景だった。
 いよいよ今回の旅のハイライトである。八幡平を走っていると、山からソフトボールほどの石が転がり落ちてきた。避けられずに石を車体の下に巻き込んだ。大きな音がしたが、そのまま走っていると急にエンジンが止まり、動かなくなった。
 さあ困った。携帯もつながりにくく、修理工場を探すのに難儀した。2時間ほどして来てくれた工場の人は「エンジンオイルのタンクが破れている。オイルが漏れて、エンジンが焼きついた。廃車ですね」という。道路わきにへたり込んでしまった。愛着のあるボルボのステーションワゴン・・・。
 しかし、旅はまだ7日目。このまま帰る訳にはいかない。レンタカーを借りて旅を続けようと女房と話し合った。鹿角市でレンタカーに乗り換え、予約してあった後生掛温泉に向かった。女房はこの事態にもケロッとしていて、長々とお湯につかっている。肝っ玉が大きいのか、鈍感なのか。
 動転してすっかり忘れていたが、車両保険に入っていたのだ。保険会社に連絡すると、保険金が出るとのこと。にわかに元気になり、岩手山の美しい山容を眺めながら車を走らせた。


IMG_0211_convert_20080929150924.jpg

 翌日は十和田湖、奥入瀬渓流を見て、下北半島に向かった。マグロの大間のホテルに泊まり、小料理屋で食事した。マグロの刺身は9切れで4300円。目ん玉が飛び出て注文しなかった。

IMG_0218_convert_20080929151414.jpg
IMG_0221_convert_20080929152330.jpg


 恐山は地獄のような不思議な世界だった。次は青荷温泉、通称ランプの宿に向かった。ここも事実上の混浴で、うれしかった。夜、津軽三味線の実演があった。小金を持っていたので、女房に山葡萄の蔓で編んだバッグを買ってやった。喜んでいた。

IMG_0244_convert_20080929151708.jpg

 新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』は若い頃読んだので、どうしても八甲田に行きたかった。雪に足を取られながら、碑の所まで登った。山を下る途中、美しい岩木山が見えた。
 再び北上して竜飛岬へ。この日はあいにく民宿の定休日だったが、岬の先っぽにある民宿の女将さんの好意で泊めてもらうことが出来た。「料理の材料がない」と聞いていたので余り期待していなかった。ところが、出てきた料理は腰を抜かすほどのご馳走だった。腹がはちきれそうになった。

IMG_0262_convert_20080929152047.jpg

 翌日は日本海側を下り、鯵ヶ沢経由して弘前へ。世界遺産の白神山地にも行った。登山の用意もしてきたが、歩くコースが制限されており、期待したほどではなく、がっかりだった。

IMG_0263_convert_20080929152539.jpg

 岩木山を眺めながら車を走らせ、十二湖に立ち寄った。青湖という名前だったか、薬品を入れたような不気味な青さが印象に残っている。

IMG_0268_convert_20080929152857.jpg

 秋田で買い物をして、酒田市の土門拳の写真美術館に入った。女房は数々の写真に釘付けになっていた。山居倉庫も良かった。太いケヤキが歴史を感じさせた。
 鶴岡と言えば藤沢修平の世界。小説に出てくるような景観はもちろんなく、映画「たそがれ清兵衛」のセットが残されたロケ地に足を運んだ。羽黒山、月山方面に車を走らせ、おいしい蕎麦も食べた。
 いよいよ旅も終わりに近づいた。曲がりくねった山道を走り、肱折温泉に泊まった。岩をくり抜いて作られた長い廊下を進むと、薄暗い湯船があった。ゆっくりと湯につかり、長い旅の疲れを癒した。
 豊かな水を湛えた最上川を見ながら、みちのくの旅を終えた。あちこちで人の親切に触れ、素朴な郷土料理にも出会えた。ほとんど夫婦喧嘩もせず、旅を楽しんだ。車1台つぶしたが・・・。

 長い、長い、退屈な旅日記。最後まで読んで下さった方に感謝します。
スポンサーサイト
Genre : 日記  写真日記
   16:00 | Comment:16 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
 ラフティングGOGO! [URL] #pn.FNN1k
湯けむりが恋しくなる季節ですね。
雪景色 2008.09.29 (月) 17:42 [Edit]
 dejavuewords [URL] #hdScUxTA
中学時代の教習生が酒田近くの余目出身で、遊びに来ないかと誘われて行ったのが初めての東北でした。
羽黒山に本間美術館や温海温泉など行きましたが、いちばん印象に残ってるのはSLが走ってることでした。
旅はいいものです。

林道を走るときはオイルパンを破かないようにアンダーガードしたほうがいいです。
こちらも後で大沢温泉へ行ったときのことでも書きましょうかね・・・
40年前に初めて東北に行ったことを思い出します 2008.09.29 (月) 18:14 [Edit]
 ノル [URL] #-
17日間もかけてゆっくり旅をするなんて素敵ですね!
私も夫が定年を迎えたらそういうのんびりぶらり旅をやってみたいです^^
子供の頃仙台に住んでいたので、蔵王や山寺など懐かしい名前が沢山でてきました。
山寺は上まで登れました?かなりキツいですよね!
ランプの宿は私も気になっているのですが、混浴ということで行く勇気がでません!(笑)
「八甲田山死の彷徨」は私も読み、衝撃を受けました。
いつも八甲田に行く度、それを思い出します。
実は今週末私も秋田~岩手に1泊旅行してきます。
岩手の湯田温泉郷に行きますよ~^^
 2008.09.29 (月) 18:22 [Edit]
 釣りじいさん [URL] #-
17日間、夫婦げんかなし!
ってのが、圧巻でやんしたよん、はい、ごちそうさま、にゃは!
完読しやした! 2008.09.29 (月) 18:58 [Edit]
 トレビアン・西 [URL] #9B64OxmM
こんばんは。夫婦仲良いですね。羨ましい夫婦です。ほんまに羨ましいです(*^_^*)
 2008.09.29 (月) 23:30 [Edit]
 赤スペです [URL] #-
 こちらでのコメントははじめてになります。稚ブログにてコメントありがとうございました。赤いスペード(略)の赤スペです。

 森に暮らすひまじん様、詩的な表現も魅力的ですね。滋賀からの長距離の長旅。写真や日記から、東北のさわやかな空気が、その場の暖かいお持て成しが、突発的なトラブルもありながら、旅をゆっくり楽しまれている、時間が伝わってくるかのようです。

 まだ、雪が残っている、なのに、夫婦の暖かい時間。殺伐とした時代を、憂いてばかりの私ですが、森に暮らすひまじん様のように、日常を大切に伝えてくださるサイト・ブログ様に出会うと、うれしく思います。

しかし、お車、災難ですよね。
酷道 険道、でgoogle検索すると、大変な道がたくさんです。
 2008.09.30 (火) 01:22 [Edit]
 かっちゃん [URL] #-
はじめてコメントさせていただきます。
東北は福島に住む者です。

東北の良さを17日間の旅行で満喫されたご様子、羨ましくさえ感じます。
見てる者ですら行った気分になれました。ありがとうございます。

当ブログものぞいてみてください。お待ちしております。
 2008.09.30 (火) 06:34 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 石が転がり落ちてきたのは、林道などではなく、舗装された普通の道なんですよ。まあ、運が悪かったのでしょう。
 大沢温泉のレポートを楽しみにしています。
dejavuewordsさん、こんにちは 2008.09.30 (火) 17:51 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 ランプの青荷温泉は混浴でないお風呂もありますよ。混浴のところは、入り口が男女に分かれていて、湯舟の奥で混浴となるのです。
 山寺は一番上まで登りました。いい景色でした。湯田温泉郷はぜひレポートして下さいね。来年、再び東北旅行を計画しているのです。楽しみにしています。
ノルさん、ランプの宿はいいですよ 2008.09.30 (火) 17:58 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 釣りじいさん、こんばんは。最後までお付き合い、すみませんねえ。友人にも話したことがありますが、長い旅の間、ほとんど喧嘩しなかったと言うと、驚いていました。まあ、相手の話をお互いに真剣に聞いていないともいえますね。
最後まで・・・ありがとうございます 2008.09.30 (火) 18:01 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 トレビアンさん、ありがとうございます。私たち夫婦はベタベタした仲ではありません。だから、喧嘩にならんのです。いいのか、悪いのか・・・
それほどでもありませんよ・・・ 2008.09.30 (火) 18:07 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 コメント、ありがとうございます。赤スペさんのように、時事問題を取り上げるほどの素養も勇気もないのです。
 これからも、他愛ないネタになりますが、森の暮らしを書き続けていきますので、気が向いたときに、読んで下さい。
赤スペさん、もっと憂いで下さい! 2008.09.30 (火) 18:15 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 かっちゃん、コメントありがとうございます。福島は自然も豊かで、羨ましいですよ。すっかり東北にはまっていますので、来年も旅行を計画しています。ブログを通じて、お子さん3人のご活躍を見守っています。ワンちゃんも・・・
福島はいいですね、大好きです! 2008.09.30 (火) 18:21 [Edit]
 まるまる [URL] #-
私もいつか夫婦で行ってみたいです。

秘湯と言われる温泉に行きたい。

そのときは詳しく教えて下さい。
行った気分になりましたけど、 2008.09.30 (火) 23:34 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 東北はいいですよ。温泉も郷土料理もいい。来年は宮沢賢治の世界に触れてきたいと思っています。車をつぶさないよう気をつけながら・・・
まるまるさん、お教えしますよ 2008.10.01 (水) 19:16 [Edit]
 やっちゃん [URL] #TFop3Crc
こんばんは、
文章と画像の間から、17日間のご夫婦の「旅」が、3年の時間を感じさせない程新鮮に伝わってきました!楽しい記事、有難うございます。
 2008.10.06 (月) 01:01 [Edit]






(編集・削除用)

 

管理者にだけ表示を許可
 
 
Trackback
 
http://yoko87.blog74.fc2.com/tb.php/183-090c93cd
 
 
カレンダー
 
07 | 2017/08 | 09
- - 1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31 - -
 
月別アーカイブ
 
 
カテゴリー
 
 
ブログ内検索
 
 
全記事表示リンク
 
 
 
訪問者数
 
 
ランキング参加中!
 
 
リンク
 
 
PR
 
 
PR
 
 
PR