【夫の日記】 笹ユリに恋する

  私は小学生のころ、よく父親に連れられて家の近くの山に行った。父親は仏前に供える木を伐ったり、チマキを作る笹の葉を採ったりしていた。時々、生い茂る雑木や草の陰に隠れて父親とはぐれることがあり、怖い思いしたことがあった。

 それはちょうど今頃、初夏だった。父親の姿を追っていた時、草の中に、すくっと白いユリが咲いていた。子供心にも美しいと思った。長い年月の間にその記憶は増幅され、白い花だけがスポットライトの光で浮かび上がっていたように思い出される。

 花が美しいと思う瑞々しい、無垢な心は、大人になるにつれて失われていった。進学の勉強に苦心し、働くことに追われ、結婚して女房に心を砕き、周りの人たちに気を遣い・・・。一輪の花をまじまじと見つめる心の余裕を持てなくなっていた。

 しかし今は、草花や森の木々を美しいと思えるようになっている。女房に気を遣う以外は、もはやストレスといったものはなくなり、気ままで自由な日々である。美しいものを美しいと思える当り前の生活を取り戻したのだ。

 少年のころに見たユリの花の記憶と繋がっているのか、私はユリが好きである。特に、もうしばらくすると山小屋の周囲に花を咲かせる笹ユリに心を奪われる。

 笹ユリは何と言っても清楚である。香りもいい。真っ直ぐ伸びる茎は、しなやかに風になびき、健気でさえある。ニッポン女性もこうであらねばならない。清らかで、近づけばそこはかとない芳香が漂う。その茎のように、気立ても優しくなければならぬ。おい、分かったか女房!

 私たちが暮らす山小屋の敷地には笹ユリが群生している。今朝、数えてみると40株ほどあった。そのいくつかには、すでに少女の乳首のような花芽が付いていた。

 花が咲くと、いつも近づき過ぎて鼻の頭に赤茶色の花粉をつけてしまい、女房に笑われる。それほどあの花の香りが好きなのだ。どのように表現したらいいか、適当な言葉が見つからないが、要するに気品に満ちているのだ。

 花が咲くのが待ち遠しい。コーヒーカップを片手に、笹ユリの花を楽しむ早朝のひと時が至福の時間なのだ。女房に隠れて、ユリを恋人なぞらえて仮想恋愛を楽しんでいるのかもしれないが・・・。

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     ↓笹ユリより一足早くシャクナゲが咲いた
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コメント

笹ユリ

その時のユリの印象がよほど強かったんですね。
コーヒーカップを片手に、その時の思い出の花を身近に楽しむことができるなんてホントに最高ですね。

こんばんわ~

笹百合はひまじんさんの記事で初めて知りました。関西の花で関東には無いのですね・・・見てみたいですわ。^^

関東では、赤い点々の多い「山百合」が馴染みでした。香りが高く、山肌に覗く白い姿は、存在感と芳香が素晴らしかった。
気品は笹百合には及ばないとは思いますが、私の百合好きもそこに起因すると思います。^^

フフフフ

去年のユリの記事よりニヤけて読ませていただきました。
ひまじんさんの記事は、読みながらニヤニヤしてしまうのが多いですね~。
文体に特徴があるので、感染しそうで困ります!

確かに白ゆりが咲いてるのを見つけると懐かしいというか幸せな気持ちになりますね。

私も日々の仕事に忙殺されず、花を愛でる気持ちを取り戻したいものです。
でも広い海にボートで浮かび、海に抱かれる悦びを知っているのでまだ恵まれていますかね?
百合に仮想恋愛しなくても、ひまじんさんには向日葵の様に明るく天真爛漫な奥様がおられるじゃないですか。ひまじんさんの楽しい森暮らしは奥様あってこそと何時も感じています。
ま、百合の花をネタに奥様の気を引こうとしてらっしゃるのはお見通しですがねっっっ!(笑)

つとりんさんへ

 若い笹ユリは普通、一輪の花を咲かせますが、球根が大きくなると10輪くらい咲くのです。こうなると可愛いというより、壮観です。

マダム半世紀さんへ

 笹ユリはすでに希少植物のようになっています。美しく、香り高い花ですから、乱獲されたのだと思います。花を採ると、茎から水が入り、球根を腐らせるのです。昔の人は茎を折り曲げておいたそうですよ。

kumoki さんへ

 たいした文体ではございません。ただ、日常生活の中に、クスリと笑えるような会話や出来事があり、これを文章に織り込みたいと思っています。読者のみなさんが、ニヤリとしていただければ幸いです。

ジジィさんへ

 コメントありがとうございます。ユリの花を見て、懐かしい思いにかられます。同じなんですね。清純への男の憧れでしょうか。

亀丸さんへ

 いやー、亀丸さんこそ幸せですよ。17年も前から、海にプカプカしていらっしゃる。釣りも好きなのでしょうが、結局は男のロマンなのでしょうね。
 火曜日にイカ狙いでボートを出しましたが、1日中、ピクリともしませんでした。その時、大阪から2漕のボートが来ていました。仲間だそうで、1漕の方はものすごい艤装で、8馬力のエンジンにエレキもついていました。ホント、参りました。
 エギングをやっていましたが、坊主で昼前に帰って行きました。小杭へは初めてだったそうです。
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