森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

ものぐさに暮らしたい

  谷崎潤一郎の作品に「懶惰の説」という随筆があるという。以前このブログで紹介したことがある辰濃和男著「ぼんやりの時間」(岩波新書)でその随筆を紹介しており、「懶惰(らんだ)」という難しい言葉を初めて知ったのだ。「ものぐさ」「億劫」という意味らしい。

 随筆によると、東洋人は年中あくせくして働く人を冷笑し、時に俗物扱いする傾向がある。西洋人は懶惰に批判的で、浮世を捨てて山の中に隠遁し、独り瞑想にふけっているような人物を高潔とは思わず、エゴイストに過ぎないと切り捨てる。

 そこでわが身を考えてみる。なるほど私は都会を離れて山奥で生活しているが、谷崎の言う「浮世を捨てて山の中に隠遁」している訳ではなく、いわゆる「田舎暮らし」の一つの形だ。ただ、社会的に意味のあるような生活をしていない私のようなタイプは、西洋人にとって「悪徳中の悪徳」と映るそうだ。

 西洋人から悪徳と言われようが、エゴイストと呼ばれようが余計なお世話である。むしろ、私がまだ「懶惰の域」に達していないことの方が問題だと思っている。もっと怠惰に、ものうい生活をしたいのだ。

 唐代の僧、寒山は「懶」という言葉を使った詩を書いているそうだ。要約すると、「何をするのも億劫だし、面倒だし、怠けて暮らすのがいい。地位、名誉、重責、使命、財産などという重いものは大嫌いだし、重いものを背負っていくような生き方は真っ平だ」となる。

 ほ、ほー、ここまで割り切れるものかと思う。高根に咲く一輪の花のようでもある。この寒山には拾得という友がおり、森鴎外は「寒山拾得」という短編で二人の人物像を描いているそうだ。読んだことがないので、「ぼんやりの時間」から要約して引用してみよう。

 拾得は寺で下働きをし、寒山は石窟に住んでいて拾得が持って来る食事の残り物で生活している。二人ともみすぼらしい小男だった。ある日、中国の高官が二人に会うため寺を訪ね、袖をかき合せてうやうやしく礼をした。すると、寒山と拾得は顔を見合わせ、笑い声を上げて寺を駈けて逃げた。

 小説はここで唐突に終わるのだが、なぜ逃げたのか。地位とか、官職とか、服装とか、偉い人とかはどうでもいいと言っているのだ。高い地位のある人物と相対し、真面目に話し合うのに耐えられなかったのだろう。奇人ぶりも半端でないだけに、むしろすがすがしい。

 ところで私は、雨の日が好きである。雨が降れば新聞か本を読み、居眠りするしかないからだ。こうして一日を怠惰に、ぼーっと過ごすのは、まさに絵に描いたような懶惰である。次の日も雨なら、また懶惰な一日となる。

 しかし、三日も雨が続くといけない。「何かしなければ」という強迫観念が頭をもたげるのだ。このあたりが私の中途半端なところである。懶惰になり切れないし、かと言って意義のある生活も出来ない。

 人生、これでいいのか・・・。雨の日に、「懶惰」に身を委ねながら、そんなことをぼーっと考えてみよう。
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   08:00 | Comment:2 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
ひまじんさんは現役時代に社会的意義のある仕事をしてこられたからこそ、今の生活ができて「懶惰」に身を委ねることができるんでしょうね。見習いたいです。
でも、3日目に「何かしなければ」という強迫観念が頭をもたげるのは日本人の性質でしょうね。
あまりに家でゴロゴロしてると、奥様の厳しい視線が気になるし・・・。
 2010.09.26 (日) 18:33 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
 要するに私は貧乏性なのです。3日もグータラしていると、これじゃいかんと思ってしまいます。
 貧乏性は、釣りには向いているのではないかと思っています。ひんぱんに餌を付け替え、誘いをかける・・・。釣りはやはり手数ですからねえ。
 2010.10.01 (金) 18:10 [Edit]






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