森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

高橋克彦さんが描く東北の心・・・

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 東日本巨大地震が起きる数日前、書店でたまたま手に取った文庫本が高橋克彦著「風の陣」だった。東北地方で平和に暮らしていた蝦夷と、黄金が眠る陸奥を支配しようとする奈良朝との暗闘を描いた物語である。小説の舞台は東北地方と奈良の都にまたがり、過酷な地震の被災地に思いを馳せながら読んだ。

 著者はこの続編を次々書いている。「風の陣」に続く第二部は、「火怨-北の耀星アテルイ」(上下巻)。第三部は「炎立つ-北の埋み火」(5巻)。第四部の「天を衝く-秀吉に喧嘩を売った男九戸政実」(三巻)で完結するのだが、これらをまとめて「東北四部作」と呼ぶにふさわしい壮大な歴史小説だ。

 先ごろ、全15冊をすべて読み終えた。時に涙し、年甲斐も泣く嗚咽もした。随所に独特のユーモアも散りばめられていて、ニヤリとさせらることもあった。著者は岩手県の生まれで、郷里に腰を据えて文筆活動を続けている。郷里への贔屓もあろうが、東北の「精神性」の高さが一貫して描かれていた。

 このほど世界遺産に登録されることになった平泉は、藤原清衡が築いた黄金の都であり、東北の楽土を目指すものだった。今、辛酸をなめている被災地の復旧と復興を願わずにいられないが、この四部作を読んで清衡が理想としたような平和な東北が、この地の人々の手で必ずや達成されるとの思いを強くした。

 出版元の回し者ではないが、興味のある人はぜひ四部作を読んでもらいたいと思う。物語はおおむね史実に沿っており、被災地の地名もふんだんに出て来る。本には地図も添えられているので参考になる。涙あり、笑いあり、人情あり・・・。とにかく面白いし、被災地の歴史もよく分かる。

 「風の陣」は、「立志篇」「大望篇」「天命篇」「風雲篇」「裂心篇」の五巻で構成されている。陸奥で金が発掘されると、これに目を付けた奈良朝は陸奥の支配に乗り出す。蝦夷の平和を守るため暗闘が繰り広げられるが、謀略渦巻く奈良朝の権力闘争や弓削道鏡の欲望も描かれていて、古代のサスペンスとしても楽しめる。

 第二部「火怨」は、蝦夷の若きリーダー・アテルイが熱い思いを胸に、東北を辺境の地と蔑み、そこに住む人々を俘囚と呼んで差別する朝廷の大軍に遊撃戦を挑む。敵将は征夷大将軍の坂上田村麻呂だ。アテルイや彼に従う多くの将たちは強大な権力の前に散って行ったが、蝦夷の心は後世に受け継がれる。

 それから百年の時を超え、第三部「炎立つ」では安倍一族と源氏が相まみえる宿命の戦いが始まる。いわゆる「前九年の役」である。結局安倍一族は滅びるが、その子孫が「後三年の役」を呼び起こす。この乱を治めた藤原清衡は、平泉に黄金の都を築いて栄華を誇った。しかし孫の秀衡の時代、源頼朝が陸奥に暗い影を落とす・・・。

 最後の第四部「天を衝く」は、勇猛かつ知将で知られる九戸政実が太閤秀吉を敵に回す痛快な物語だ。10万の秀吉軍に対し、居城の二戸城に5千の兵で立てこもり、敵を翻弄する。いかに秀吉が理不尽な男かを知らしめるための戦だった。最後は城を明け渡し、自らの首を差し出すのだが、多くの兵を密かに逃す策略が面白い。

 偶然手に取った本だったが、巨大地震の被災地とを重ね合わせながら、東北を舞台にした長編小説を読むことが出来た。武者の姿を通し、義に篤く、我慢強い陸奥に生きる人間像を描いている。今回の震災で、節度を失わなかった被災者の姿が世界から称賛されたが、この小説の描こうとしたものと通じているように思えた。誇らしい、日本人の心の原風景・・・。
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   08:58 | Comment:2 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
 お早う御座います。本格的な梅雨ですね。良く降って居ます。
 
 アテルイですか。懐かしい名前ですね。歴史本で読んだ記憶があります。現在覚えようとしている歴史本の『文化の化石=地名』の切り口で、日本の歴史を書いた本が有りまして、日本の各地に残る蝦夷の言葉の中に秘められている歴史を呈示してくれた物でした。
 九州の岩井の乱と東北のアテルイの話とか、大陸の沿海州との金の交易の話とか、色んな話が満載されていました。そんな事を思い出しながら、兄貴の名文を楽しく拝読させて頂きました。

 そうそう、大分前でしたがNHKの大河ドラマで、<炎立つ>有りましたね。あの頃の大河ドラマは、参照に為りましたが、今時の田淵久美子なんて、オッチョコチョイの馬鹿女史先生の歴史を玩具の様に弄繰り回す漫画チック歴史ファンタジー大河ドラマは、国賊の為せる処にしか見えず、日曜のテレビの楽しみが無くなってしまいました。へへへ、実に困った世の風潮です。
 2011.05.29 (日) 11:26 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
   アガタ・リョウ さんへ

 こちらも強い風とともに、大粒の雨が暴れています。これで家に3日間も閉じ籠っています。
 大河ドラマ、よくぞ、よくぞ、言ってくれました。なんですか、あのドラマのくだらなさは・・・。浅井長政は私の故郷の殿様だけに、漫画仕立てのドラマに腹を立てています。石田三成も同郷人ですが、馬鹿にしたような役柄。まあ、仕方がないので見ていますが、いつも後味の悪さを感じています。
 2011.05.29 (日) 18:30 [Edit]






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