森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

愛犬「ぴぃ助」 / 放浪する痩せた猟犬

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 わが山小屋に、娘の愛犬が来て半月ほどになる。シーズの雄で、年齢は3歳。人間の年齢にすると、紅顔の美少年と言ったところだろう。名前は「ぴぃ助」である。娘に拝み倒し、ひと月預かる約束で拉致してきた。

 ここへはもう何回も来ているので、ぴぃ助にしてみれば山小屋は勝手知ったる場所である。日中は薪ストーブ前の特等席を占拠しているし、夜はムートンを敷いている椅子の上ですやすやと熟睡している。

 ぴぃ助の表情は生き生きとしていて、居心地が良さそうである。それもそうだろう。娘が働きに出れば、長い時間、ずっと一人ぼっちだった。しかも、防音の行き届いたマンションだから、無音の世界である。さぞや、寂しかったろう。

 そんな反動か、ぴぃ助はここへ来た時からしきりに体を寄せて甘えるし、じっとこちらの目を見つめ続けている。顔をペロペロ舐めるのには閉口するが、それでも森の山小屋暮らしをするわれら夫婦を慰めてくれている。

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 幸せそうなぴぃ助を見ていると、数年前に体験した苦い思い出が蘇って来る。

 それは、女房とともに山小屋前の路上にいた時だった。前方から1匹の犬がやって来た。足の長い白い犬だった。とぼとぼとした足取りで、時折こけそうになって歩いている。

 私たちに近寄って来た犬は、あばら骨が浮き上がり、白い毛は黒ずんでいた。やがて、ひざまずくように座り込み、悲しげで、卑屈な目で見上げるのだ。空腹のため体力が弱っているように見えた。

 汚れてはいるが、どこか気品のようなものが漂っていた。猟犬かもしれない。道に迷ったのだろうか、飼い主に捨てられたのだろうか。役に立たなくなった猟犬を捨てる無慈悲な人がいると、聞いたこともある。

 噛みつかれたら困るので、「あっちに行け」と手ぶりで追い払おうとしたが、後ずさりするだけで、離れようとしない。野犬のような獰猛さはなく、弱々しい目線に、人懐っこさがあった。次第に哀れになってきた。

 大きなおにぎりを二つ与えた。犬はむさぼるように食べた。空腹を満たしたらどこかへ行くだろうと思って、私たちは山小屋に戻った。何時間かして表に出るとあの犬が寝そべっていて、哀れを誘うような目を向けてくるのだ。

 私たちが山小屋に定住する前のことだったので、この日夜には自宅へ帰らなければならない。しかし、この哀れな犬を残して帰るのは忍びない。どこか人家のある場所に連れて行けば、誰かが食べ物を与えてくれるのではないかと思った。

 そこで、すき焼きのお汁をまぶした美味しそうなおにぎりを何個も作り、これを車の窓から犬に与えながら、山のふもとの集落まで走った。うまく誘いに乗ってついてきた。集落の広場で車をUターンさせ、全速力で走った。犬はついて来なかった。

 山小屋に帰って1、2時間すると、軒下から「クゥーン、クゥーン」という鳴き声が聞こえた。あの犬が、健気にも長い道のりを帰って来たのだ。思わず、熱いものが込み上げてきた。われら夫婦はなんと非情な仕打ちをしたのだろう。

 しかし、自宅へ連れて帰る訳にはいかない。ここ別荘地の管理会社の社長に頼み込んで、犬の面倒を見てもらうことにした。後日、管理会社の玄関に繋がれていた犬を見た人が、引き取って帰ったという。しかし今も、忸怩たる思いは晴れていない。果たして、元気にしているだろうか。

 森を放浪していた痩せたあの白い犬。わが膝の上で寝そべるぴぃ助。人間の勝手な思いだが、それぞれの犬が辿る運命のようなものに複雑な思いがする・・・。

   
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   18:06 | Comment:6 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
 たかたん [URL] #-
ぴぃ助ちゃんの幸せそうな顔が、凄くいいですね。
ペットは、出来るだけ飼い主の近くと自然が近い良い環境でいるのが幸せなんでしょうね。
僕もマンションで愛猫を飼うの諦め、人に託しました。
でも、制約の多いマンションよりも、きっと幸せに暮らししてると思ってます。
こんばんわ。 2011.11.21 (月) 23:19 [Edit]
 マダム半世紀 [URL] #-
私も千葉から戻る高速道路で、山に捨てられたであろう猟犬を撥ねてしまった事があります。
主人の運転していた車で、三車線の追い越し車線を、100キロ以上のスピードで走っていたので、避けようもなかったのですが。
高速道路ですから、ブレーキをかける事もできず、高速出口で係員さんに報告するのみでした。
長い間、車にぶつかる前の姿が目に焼きついて・・・何も出来なかった事を心の中で詫びるのみでした。

その時にいらなくなった猟犬を、山に捨てていく人がいるという話を聞きました。
猟犬だけではなく、犬猫をサービスエリアに遺棄していく人もいます。
ひどい話ですね。

ひまじんさんご夫婦は、その犬に出来る事をちゃんとしてるじゃないですか。^^
出会ったのが今だったら、もしかしたら山小屋の住人になっていたかもしれませんね。
その時は、少し縁が薄かったのかもしれません。
一飯の恩義、きちんと感じてると思いますよ。^^
こんばんわ~ 2011.11.21 (月) 23:30 [Edit]
ひまじんさんのお気持ちがよくわかるような気がします。私が前に飼っていた犬ボーダは、宮城県動物愛護センターというところからもらってきた犬でした。そこでは毎年何百匹だったかの捨て犬が処分されていました。運良く里親の手に渡るのは年に100匹以下だそうです。だから、ボーダを見て「お前はラッキーなワンコだなー」とよく思っていました。放射能の影響で退去命令が出て、置き去りにされた犬の写真を見たときとか、私もひまじんさんのような気持ちがしました。
 2011.11.21 (月) 23:41 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
   たかたん さんへ

  愛猫を手放すのは、娘を嫁に出すような寂しさがあるのでしょうね。マンションで飼われるペットは、本当に幸せなのか・・・。難しい問題ですね。時々、ぴぃ助を山小屋に連れてくるのは、いいことかもしれません。
 2011.11.23 (水) 06:51 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
   マダム半世紀 さんへ

 高速道路で猟犬をはねる・・・危なかったですね。もちろん、停車すれば大事故につながるので、仕方なかったでしょうね。
 犬や猫を捨てる神経が分かりません。使い捨時代の反映でしょうか。自分勝手が大手を振る社会の風潮でしょうか。捨てられたペットの行く末を思う想像力が欠如しているのだと思うのです。
 あの痩せた白い犬が、もう一度捨てられないことを祈るばかりです。
 2011.11.23 (水) 07:00 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
   ボーダ さんへ

 そうなんです、放射能汚染の無人の街に取り残された犬や猫を見て、涙が出ました。何を食べて生き延びているのでしょうか。ヘリコプターで餌を投下したらどうかなどと、思ったこともあります。
 私は数年前、愛犬を病気で死なせてしまいました。あの時の悲しみが大きく、二度と犬を飼うまいと思い、こうして娘からぴぃ助を借りてくるのです。
 2011.11.23 (水) 07:14 [Edit]






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