雪男はいるのか?

 「雪男は向こうからやって来た」--。その本のタイトルを目にしたのは、新聞の書評欄だった。おっ、これは面白そう。さっそく新聞を切り抜いて、財布の中に入れた。いや、入れたはずだった・・・。

 ひと月ほど後、書店に行って財布から新聞の切り抜きを取り出そうとしたところ、見つからない。物忘れがひどいため、すでに本のタイトルを忘れていた。店員に「雪男のキーワードで検索してほしい」と頼んだが、多くあり過ぎて本に辿り着くことが出来なかった。

 それから半月ほどして、大阪の「MARUZEN・ジュンク堂書店」に立ち寄った。この店は、今年オープンした日本最大の蔵書を誇る書店である。先の書店と同じように、検索を頼んだ。若い店員は「たくさんありますねえ」という返事だ。

 すると隣にいた店員が「確か最近、ノンフィクションでそんな本が出版されました」と言うや、先の若い店員が走り去った。すぐに戻ってきて、「ありました。2階のカウンターに置いておきました。ご覧下さい」。やっと探していた本が見つかった。さすが日本一の書店だけあって、サービスも一流である。

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 前置きが長くなったが、この本は期待にたがわぬ面白さである。著者は角幡唯介。まだ35歳の若手だが、文章はこなれていて、取材力にも長けている。朝日新聞記者を5年ほどで辞め、大学時代から続けている探検の道に入った。チベットの峡谷を探検した著書で、開高健、大宅壮一両ノンフィクション賞を受賞している有望株だ。

 雪男と言えば、白い毛におおわれ、人間よりもっと大きな二足歩行の類人猿を思い浮かべる。少年時代か、それより少し後か、そのようなイメージ図を何度も見た記憶がある。当時は、ヒマラヤに棲息する恐るべき雪男を思い浮かべて、胸が高鳴ったものである。

 しかし年を取るにつれ、その間に夢やロマンを失い、現実的にしか事物を見ないようになり、「雪男なんているはずがない」と思うようになっていた。そんな時に、「雪男が向こうからやって来た」という刺激的な本のタイトルを目にし、焼け没杭に火が付いたという表現がいいかどうかともかく、遠い昔に夢見たロマンの世界に引き込まれたのだ。

 雪男について、著者も最初は懐疑的であったと書いている。しかし、ネパール雪男探索隊に参加して、次第に肯定派に傾いていく。この探索隊には、実力派の登山家が参加しているし、雪男らしい姿や足跡を目撃した多くの登山家にもインタビューしている。

 それらの証言者は、芳野満彦、小西浩文、田部井淳子らの他、ルパング島で残留日本兵小野田寛郎を発見した冒険家鈴木紀夫ら錚錚たる顔ぶれだ。鈴木の場合は、雪男探索のため6回もヒマラヤに通い、雪崩に遭って死亡した。外国人登山家やシェルパの多くも、「イエティ(雪男)はいる」と断言している。

 さて、大がかりな探索隊に同行した著者は雪男にめぐり会うことが出来たのか・・・。それは本書に譲るが、私は読み進むうちに、「実在しても不思議でない」と思うようになって行った。忘れかけていた「ロマンの心」を揺さぶるいい本だった。今夜も夢の中で、ヒマラヤの雪原をさまよい、雪男を探そう・・・。

 
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コメント

こんにちわ。

面白そうな本ですね。^^
読んでみたくなりました。
ひまじんさんが推薦してくれる本は、本当に面白いです。前に紹介していただいた「薩摩スチューデント、西へ」も一挙に読んでしまいました。
ヒマラヤの雪男と鈴木紀夫さんの事、知っています。
ルバング島で小野田さんを発見してしまったプッレッシャーから次の発見へと雪男にのめり込んでしまい亡くなったと何かの本かドキュメンタリーで知りました。
当初は、バカだなあ~~と思っていたのですが、考えが変わるかもです。
アマゾンから取り寄せてみます。♪

   たかたん さんへ

 山小屋から眺める神戸方面の上空に厚い雲が覆っています。寒いですね。こちらの午前中は雪です。少し積もりました。
 
 鈴木紀夫さんはそんな事情で雪男にのめり込んで行ったのですね。彼については、この本の章として取り上げています。寒いので、家に閉じ籠って読んでみて下さい。
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