森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

高所恐怖症が槍ケ岳に登れるか・・・

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 この夏の登山計画を立てるため、ガイドブックをめくっていた女房がつぶやいた。「今年は槍に行こう」。もちろん、北アルプスの槍ケ岳のことである。「えっ、冗談だろう?」と言いかけたが、女房の目は笑っていない。

 標高3180mの槍ケ岳は、北アルプスの盟主である。峰々からは、あの天を突く奇跡の岩峰を目にすることが出来る。われら夫婦にとっては、ただ遠くから眺めるだけの憧れの山でしかなかった。

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 この名峰は、それほど難易度が高いという訳ではない。登山テクニックを要する難しい山はいくらでもある。しかしわれら夫婦にとって、あんな絶壁をよじ登るなんて論外で、これまで考えもしなかった。

 つまり、二人ともひどい高所恐怖症なのだ。

 ちなみに女房は、吊り橋が渡れない。明石大橋や瀬戸大橋を車で走ると、目を塞いで震えている。若いころ山岳部の仲間と白馬縦走登山に挑んだ時、怖い目に遭ったらしく、それがトラウマになっているらしい。

 私の恐怖症はもっとひどい。わが山小屋の屋根には薪ストーブの煙突があり、毎年煙突掃除をしなければならないが、屋根の上にどうしても上れない。梯子から屋根に足をかけるその瞬間、失禁しそうな恐怖を感じるのだ。だから煙突掃除は、人任せである。

 吹き抜けのあるビルでは、上から下を見ることが出来ない。スキー場のリフトに乗っている時も、目を空に向け、鉄パイプにしがみ付いている。女房は意外なことに、山小屋の梁を渡りながら蜘蛛の巣を取ったりしているが、私にはとても出来ない。

 このような高所恐怖症は、生まれつきのもではない。ガキ大将のころ、畑の柿の木から転落して気を失ったことがあるし、今で言うツリーハウスのようなものを作って遊んでいた。高い所で遊ぶのが楽しかったのだ。

 高所を怖がるようになったのはいつの頃からだろうか。東尋坊の断崖を覗き込んで喜んでいる学生時代の写真が残っているので、それ以降だと思う。年を取るごとにひどくなり、今の私にとって梯子に登る限界高度は4mくらいだ。ただし、吊り橋や飛行機、山のゴンドラはまったく怖くないから、おかしなものである。

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 槍の穂先は、基部かから頂上まで約100m。登攀コースは、混雑を避けるため上りと下りの一方通行になっている。いったん岩に取り付けば、岩に足をかけ、鎖をつかみ、梯子を登り続けなければならない。引き返すと他の登山者に迷惑をかけるから、頂上直下の合流地点まで行くしかないのだ。

 勇気を振り絞って頂上直下に到達出来たとしても、最後に難関が待ち受けている。垂直に近い梯子が二段になっており、まず17段5mを登ると、続けて31段9メートルの梯子だ。これを登り切ると頂上だが、このように書いているだけで奈落に落ちるような恐怖感に襲われ、もはや槍ケ岳登山は絶望的に思えてくる。

 しかし女房は、頂上にこだわらない。「槍の直下に行くだけで十分よ」。つまり、穂先を見上げて無理と思ったら潔く諦める。女房が言うように、とりあえず行ってみるのもいいだろう。「敵前逃亡」と思うか、「勇気ある撤退」と解釈するか、そこは微妙であるが・・・。いや、頂上に立てる可能性だってあるのだ。

 われらの年齢を考えると、これが最後のチャンスになるかもしれない。行ってみるかぁ~。

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