森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

映画「東京家族」を観る

 山田洋次監督の映画「東京家族」を観た。家族とは何か--。これは山田監督のライフワークであり、この作品も老いた父母と子供たちをめぐる家族の物語である。小津安二郎監督の名作「東京物語」を念頭に、長年構想をあたためてきた作品という。

 「東京物語」が上映されたのは、戦後復興の真っただ中の1953年だった。それからの日本社会は、所得倍増、高度成長、バブル崩壊、そして東日本大震災という未曽有の危機を経験した。震災は、家族や人々の絆を考えるきっかけともなった。山田監督は、今の時代に家族をどう描くのか、とても興味があった。

 映画は、瀬戸内海の島で暮らす元教師の父親(橋爪功)と母親(吉行和子)が、東京にいる3人の子供を訪ねる場面から始まる。父親は70歳くらい、母親は60歳の後半の設定だろう。長男は開業医、長女は美容室を経営し、二男は舞台美術の仕事で食いつなぐ独身である。

 滞在する長男の家も、長女の家も手狭である。両親はどこか遠慮がちで、所在なげでもある。そこで子供たちは相談し、横浜の高級ホテルで過ごしてもらおうと送り出した。ホテルの洋食を食べ、窓外の都会の風景をながめ、ふわふわのベッドに寝そべるのだが、そんなホテルの生活になじめず、1泊しただけで帰ってきてしまった。

 その夜、母親は二男のアパートに行った。息子と水入らずの時を過ごしていると、美しい女性が訪ねてきた。東日本大震災のボランティアで知り合った婚約者だという。母親は、気だてのいいその女性をたちまち気に入った。翌日、上機嫌で長男の家に帰って来たが、二階への階段を登る途中、昏倒した。救急車で病院に運ばれたが、帰らぬ人となった。

 島の自宅で葬式を営んだ。子供たちは母を亡くした父親のこれからの生活を心配した。長男は東京の自宅を増築し、そこへ引き取ると言った。しかし父親は「子供の世話にはならない」と言って固辞した。穏やかな言い方だったが、有無を言わせぬ「宣言」のように聞こえた。

 私自身のことになるが、この正月、息子夫婦が帰省した時、同じ事を言った。すると女房から「そんな事を言うものじゃないわよ」ときつくたしなめられた。「私が先に死んで、病気になったらどうするの。葬式はどうするの。偉そうに言っても、どっちみち子供の世話になるのよ」。確かにそうだが、しかし違うのだ。

 「世話にならない」は、強がりでも意地っ張りでもない。少し格好を付ければ、人生に対する「覚悟」のようなもの、子供に甘えてはならないという「矜持」のようなものを持ちたいと願っているのだ。子供の手や肩を借りることなく、最後まで自分の足で歩き続け、そしてある日、膝を折るようにしてその場で死にたいと思っている。

 もう一つ、山田監督からのメッセージがあるように思う。東日本大震災、福島の原発事故によって故郷を追われて生活する人が、今なお30万人を超えている。そのすべての人が、故郷に帰りたい、故郷で生をまっとうしたいと願っているはずだ。

 これと同じように、「東京家族」の父親も、東京で子供の世話になるより、妻と暮らした島にいたいと願うのは自然のことかもしれない。子供から説得されても故郷を離れないお年寄りが多い。マスコミなどはそれを「孤独」などと言うが、そうではないだろう。そこに根付いた人間関係があり、耕したり花を植えたりする土があり、安らぐ空間がある。

 映画は次のようなラストシーンを迎える。長男と長女はすぐに帰り、二男は父親とともに数日過ごし、島を離れた。父親は小さな畑を耕し、誰もいなくなった居間に座って足の爪を切る。のどかな瀬戸内の海が光っている。

 隣家の夫婦と中学生らしい少女が、老人をそれとなく見守っている。ご飯を届けたりもする。そして少女は学校から帰ると、いつものように老人の愛犬を散歩に連れて行く。それらは、ごく自然な日常なのだ。そこで映画は終わる。

 訥々と、さりげなく語られる家族の風景。さすが名匠・山田監督の作品である・・・。
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