森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

森の彫刻家の個展を見に行く

 生石山の森には、芸術家が一人いる。アトリエを構え、彫刻の創作にいそしんでいるのだ。弟子も3、4人いて、毎年、東京の展覧会にも出展している。この森の小さなコミュニティーの中にあって、文化人と呼べる唯一の存在である。

 私の周りには親しい仲間が十数人いるが、自然が好きでここに集まっているだけで、ごくありふれた普通の人々である。救急車が走れば何事かと詮索し合い、イノシシが出たと言って大騒ぎする。どちらかと言えば、文化とか芸術とかいう言葉に弱い。だから、この森に芸術家が住んでいるというだけで、少し鼻が高い。

 彼のアトリエはわが家からすぐの所にある。いつも弟子たちとともに黙々とノミをふるっている。時々覗いて創作活動を見守ることがあるが、軽々に言葉を発するような雰囲気ではない。「ウン、なるほど」なんて意味不明の言辞をつぶやくのが精いっぱいだ。

 つい先日のことだが、駐車している軽トラのワイパーに何かが挟んであった。彼の個展の案内状だ。彫刻展の題は「道」とあり、地元の地域交流センターが会場になっていた。早速夫婦で作品を観に行った。もちろん興味もあったが、仲間への義理立てみたいなものも否定はしない。

 ところで、私の従兄は花のパリで彫刻家として生計を立てていた。どの程度の技量かはよく知らないが、彼が一時帰国した折りに売りつけようとしたブロンズ像は100万円近かった。手に取ると随分重いという印象が残っただけで、お金もないし、価値も分からず、買わなかった。

 彼とは血を分けた間柄であるが、私には芸術を解する血は一滴も流れていない。有名な絵画を鑑賞してもそれほど心を打たれることがない。バッハを聞くより、石川さゆりや五輪真弓の方が好きだ。

 そんな私が彼の作品を批評したりするのはおこがましいが、作品を観ていると想像力が膨らみ、広大で不思議な世界に引き込まれる。女房に言わせると、私のはただの「妄想力」と言うのだが・・・。

 会場に入ると、すぐ海坊主のような五つの物体が並んでいる。題名は「古代からのメッセージ」。これまでに観た彼の作品には遺跡など「古代」をテーマにしたものが多い。「海坊主」なんて失礼な表現をしたが、古代人が整然と並び、道の彼方にいる私たち現代人に語りかけているように見える。

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 次に展示されている作品は「西の街道」。これを前に、しばらく考え込んだ。古代ローマの時代に作られたアッピア街道が浮かび上がった。街道の両側には、下枝を刈り取ったような奇妙な松の並木が続いている。作品の塔のようなものがその松を連想させた。石の轍(わだち)を疾駆する馬車の音が聞こえてきた。

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 最後の作品は、天空に延びる道である。海辺に端を発した道は、ナイフのような鋭さで天を衝く。道は、人や動物が通って初めて道になる。あの尖端の向こうに、これからどんな道が踏みしめられるのか。彼に聞いてみたいが、稚拙な質問をすれば、わが思慮の浅さを見抜かれるのでよしておこう・・・。

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   11:42 | Comment:4 | Trackback:0 | Top
 
 
Comment
 
 エコ夫婦 夫 [URL] #-
腰は大丈夫ですか?

今年の下界へ下りるのはいつごろですか?

それとリンクに加えて頂けたら嬉しいです。
大丈夫ですか? 2013.12.05 (木) 17:46 [Edit]
 イレグイ号 [URL] #-
純文学もそうだと思うのですが、「どのようにも見ることができる。」というのが芸術の基本なのでしょうね。
僕もまったく理解はできないのですが、こんな展覧会は一度覗かせていただきたいものです。
 2013.12.05 (木) 20:34 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
     エコ夫婦 さんへ

 薪作りで腰を痛め、温泉通いして治ったのですが、調子に乗って作業をし、また痛めてしまい、今は大人しくしています。顔も洗えないほど痛かったです。少し良くなりました。
 リンクに加えさせていただきました。
山を下りるのは、今月の20日以降と考えています。
 2013.12.06 (金) 17:27 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
  イレグイ号 さんへ

 私の場合は、芸術作品をみるより、雲を見ている方が妙に楽しいのです。時々、卑猥な事を想像し、ニヤニヤしているのです。芸術への感想文。出過ぎたことをしました。
 2013.12.06 (金) 17:33 [Edit]






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