森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

十一面観音・・・赤後寺

 人間の苦しみを一身に受け止めているようである・・・。観音堂の厨子が開かれ、腕を失った十一面観音さんが現れた。私の胸は締め付けられた。やがて、目に涙が滲んできた。なんと、いたわしい姿だろう。

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                *         *         *

 新快速電車は琵琶湖の西岸を北へ走る。近江舞子のあたりから田んぼに雪が見え始め、高島に入ると一面の雪景色である。近江今津で乗り換え、余呉湖のほとりにある小さな駅で降りた。

 この旅には、女房と帰省中の娘二人が同行している。娘たちは、賤ヶ岳の雪景色を映す余呉湖にスマホを向け、盛んにシャッターを切っている。私と女房は十一面観音を巡り、娘は知り合いの家へ遊びに行く。

 知人から借りた軽トラを運転し、除雪された道路を南へ走った。ここ北近江は観音の里である。その中心とも言える長浜市高月町へは半時間ほどで到着した。田園地帯にせり出した森の中に、目指す赤後寺(しゃくごじ)があった。

 この無住のお寺には、国の重文に指定されている十一面千手観音と聖観音の立像二体が安置されている。唐川という集落にあるため「唐川の観音さん」で通っている。また、「厄を転じて利となし、私利を転じて衆利となす」というい言葉から、「コロリ観音」としても親しまれている。コロリと死ぬのは万人の願いである。

 お寺に着き、世話役の携帯に電話すると、観音堂の鍵を持ってすぐ来てくれた。まず、石段の手前にある「枕石」について説明を受けた。羽柴秀吉と柴田勝家の戦乱で寺から火の手が上がり、村人は観音さんを背負って逃げ、川の中に沈めて隠した。その時、観音さんの枕にしたのが「枕石」として今に伝わっている。

 石段を上がると、杉の古木に囲まれた立派な観音堂があった。世話役がスリッパを出してくれ、堂内に導かれた。厨子の前には布が垂らされていて、中は見えない。私はメモ帳を探すためリュックの中をごそごそしていて厨子から目を離していた。目を元に戻すと布が外されており、いきなり二体の立像と向き合うことになった。

 その瞬間の思いは、冒頭に書いた通りだ。左側の十一面観音は満身創痍である。凄絶と言ってもいい。もう、胸が詰まってしまった。「いたわしい」という言葉以外にない。40本あった腕は12本しか残っていない。しかも手首から先が失われ、頭上仏もなくなっている。今は亡き作家井上靖は「いかなる言葉も出せなかった」と書き残している。

 痛々しい姿ではあるが、それを超越した包容力あふれる姿である。肉付きのよい顔に、切れ長の目。像高は182・2センチ、金箔が少しだけ残っている。平安前期のヒノキの一木造りで、同時代を代表する仏像とされている。

 二体とも長い間、秘仏になっていた。集落の人が拝めるのは、3月2日のほんのひと時だけだった。こんなエピソードもある。他所の人が村人に紛れ込んで拝観しようとしたところ、厨子の扉が開かなくなったというのだ。昭和44年に重文に指定され、これを機会にやっと一般の人も拝めるようになった。

 赤後寺を後にしてしばらく経つが、まだ凄絶な姿が目に焼き付いたままである・・・。

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 イレグイ号 [URL] #-
ひまじんさん、
あけましておめでとうございます。
今年も、どうぞ、よろしくお願いいたします。

十一面観音の一番うしろのお顔は大笑いをされているお顔とか。
世知辛い世の中であくせく生きている人々をあざ笑っているのか、それとももっと頑張れまだまだやれるぞと励ましの笑いをしてくれているのか、それともこんな寒い中海に行くのか?とあきれながら笑っておられるのか・・・。
菩薩様はどんな思いでわらっておられるのでしょうか。
 2014.01.06 (月) 13:25 [Edit]
 森に暮らすひまじん [URL] #-
    イレグイ号さんへ

 明けましておめでとうございます。
イレグイさんの年初のブログは羨ましい限りです。
大津に帰るのが早過ぎたと、つくづく後悔しています。
幸先がいいですね。
真鯛にハマチ。新年にふさわしい料理を堪能したでしょうね。
 十一面観音さんの後頭部にある暴悪大笑面。
宗教の本をたくさん読んでおられるので、さすがです。
人間の悪行、おろかさを笑い、救おうとしているのだと思いますが、まだ素人なので自信はありません。
 北近江の向源寺の観音さんは国宝で、人々を圧倒する仏像です。
私は2回か3回拝みました。
ここは、珍しく後ろに回って拝観できるので、大笑面を見ることができます。
物凄い形相です。
一見の価値がありますので、どうぞ定年後に。だいぶ、先ですな・・・。
 2014.01.06 (月) 17:46 [Edit]






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