森に暮らすひまじん日記

第二の人生を歩む私たち夫婦は、和歌山の生石高原に近い森の中で暮らしています。豊かな自然の恵みにあずかりながら、有機栽培で野菜を育てたり、近くの渓流や海で魚を釣ったりする気ままな日々です。そんな暮らしぶりを綴っています。 
 

「櫛挽道守」ー 心に残る本だった 

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 お盆は、生石高原の山小屋を離れ、空き家にしている大津の自宅で過ごした。東京で暮らす娘は二人とも、帰省するなら大津がいいと口をそろえた。虫や蛇もいる山奥の家より、高校まで過ごした大津の方が居心地がいいのだろう。

 われら夫婦は娘の帰省を心待ちにしていたが、「親の心、子知らず」である。彼女たちは、友達と会いに行ったり、買い物に行ったりと、親と一緒にいる時間は少ない。レンタカーで奥琵琶湖の海津大崎まで走り、湖畔でバーベキューをしたのがせめてもの救いである。

 特に男親にとって、女の壁は厚くて高い。女房と娘の3人はおしゃべりにかまびすしい。男は、そんな輪の中になかなか入れない。今風に言うと、「うざい」と思われるからだ。自然とわが個室に引き籠ることになったが、その間、一冊のいい本を読むことが出来た。ぜひ、紹介したい。

 お盆の前、大津の書店をぶらぶらしていると、時代小説の棚に1冊だけこの本が立てかけてあった。題名は「櫛挽道守(くしひきちもり)」で、著者は木内昇。その題名には、燻したような古色が漂っており、表紙には雪をかき分けて咲く福寿草が描かれていた。作品の書き出しもいい。「歩を進めると、足元の雪が鳴いた」。雪国生まれの私にはよく分かる。

 本と言えば、安い文庫本を買うか、アマゾンで中古本を探すことにしており、高価な単行本を買うことは滅多にない。しかし本を買うことに迷いはなかった。本の題名も装丁も心を和ませる雰囲気を放っていたからだ。1日余りで読んでしまったが、私の直感は当たっていた。

 作品の舞台は、旅人が行きかう木曽路の藪原宿。時代は幕末だ。ここでは「お六櫛」が作られており、櫛挽の名人と謳われる吾助一家の物語だ。主人公は、父吾助の背中を見つめながら櫛挽の技を追い求める登瀬という名前の娘である。余談だが、本を読んでいて登瀬と女優の尾野 真千子の顔がダブって仕方なかった。

 一家は貧しく、櫛を作ることで細々と生計を立てていた。跡取りの長男は幼くして亡くなり、気性の激しい二女は嫁ぎ、吾助夫婦と登瀬の三人暮らしだった。そんなある日、江戸で櫛挽の修業を積んだ実幸という男が弟子入りしてきた。

 実幸が挽く櫛の完成度は高く、吾助もその技を認めたほどだった。身なりも良く、なかなかの商売っ気もあった。次第に登瀬の中に、実幸へのライバル心が芽生えて行った。彼女にとって父親は天下一の職人であり、唯一無二の師匠なのだ。到底、彼を認める気にはならなかった。

 仕事場である板の間からは、朝から晩まで櫛を挽く音が聞こえる。名人芸の吾助のリズミカルな音を心に刻み込む登瀬。淡々と自分の仕事に打ち込む実幸。母親は実幸の婿入りを願い、彼の前では妙にへりくだる。著者は、この狭い板の間で繰り広げられる人間模様を見事に描き出すのだ。

 著者は本の最後の方で、吾助のお六櫛について問屋の旦那に次ぎのように語らせている。「若い頃から櫛挽いてきた者は手に疲れが出てしまっで、一番ええときほどにはいかんものだがね」「だども、吾助さんの櫛にはなんともいえねぇ味がある」。文章の端々に、職人への敬意が込められている。

 涙が滲む場面が随所にある。山深い木曽の情景描写には、著者の筆圧を感じる。久々に出会ったいい本だつた。さて、水と油の関係とも言える登瀬と実幸はどうなるか。まぁ、読んでのお楽しみにーーー。

 *最後の2行のところでパソコンがダウンしてしまった。知り合いのパソコン店に相談したら、相当重症とのこと。仕方なくお店のパソコンを借りてアップした。長い間ブログを更新していなかったが、ちゃんと生きています。更新が滞るかもしれませんが、今後ともよろしくお願いします。

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